ソフトバンクは19日、山川穂高内野手の入団会見を行った。西武から国内FA権を行使して、新天地への移籍となり「この度、ソフトバンクホークスさんにお世話になることになりました。まずここまで決断に時間がかかってしまい申し訳なく思っています。一連の私の不祥事でライオンズ、ライオンズファン、多くの方々にご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした」と第一声から謝罪する形となった。
会見に同席したのは三笠杉彦GMのみだった。11月14日にFA宣言をして、1か月以上の時間をかけて獲得に踏み切った。三笠GMは山川本人、山川の代理人に限らず「多方面からの調査を行った」と説明。実際に山川とホークスが面談をしたのは1度だけだといい「野球に対する姿勢、考え方、ホークスに対する印象だったりとか、いろんなことを研究して練習に打ち込む、と。その中から出てくる言葉もいろいろあると話をしても感じたので、深く反省をしているということ」と、球団としてのスタンスを語る。
山川の今季の推定年俸は2億7000万円だった。ホークスの若手たちにとって高い壁になるだけではなく、山川はAランクと見られ、人的補償が発生する可能性もある。山川獲得によって、若手たちに与える影響を球団はどのように考えているのか。人的補償について、三笠GMが話す。
「そこは山川選手を獲得というか、Aランク、Bランクの選手をFAで獲得する時には常に付きまとう話ではありますので。そこは当然、昨年、近藤選手を獲得した時にもその議論にはなったんですけど。最終的には獲得をしようという話となりました」
当然、人的補償にとって選手が移籍する可能性も含めて、山川を獲得したと強調した。「若い選手にとっても、実績のある選手を乗り越えてほしい?」と問われても三笠GMは「そうですね」とうなずく。山川の主なポジションは一塁で、バッティングが持ち味の選手と被る可能性も大いにあるだろう。戦力分析の観点でも及ぼす影響についてもこう続ける。
「(今季は)攻撃力としては得点力もリーグでトップクラスではありました。若手への……みたいなところも課題となっているのは私どもとしても認識しているところです。一方で、山川選手については今年のブランクがありますが、右のホームランバッターとして日本を代表するバッターという能力評価を行っています。来年以降も戦力になると、今の既存の戦力と比べても、山川選手が出場することで戦力の向上が見込まれるということ」
「打撃の技術論というところでも、日本でトップレベルの考えを持っていると我々としては評価しているので。若手にも交流をしっかりとしていただいて、大きな影響があるのではないかというところで評価をしています。当然、競争になって出場機会が奪われるところで、若手の台頭という観点においては、ややデメリットがあるところもありますが、山川選手の技術、考え方を吸収することによって、ホークスの若手がさらに成長をする。そういうプラス面も考えられるのではないかと、総合的に考えて獲得という判断をさせていただいた」
3年間優勝から遠ざかるだけではなく、新しい若手がなかなか出てこられない。世代交代も、今のホークスにおいて大きな課題のひとつだ。昨年は近藤だけではなく有原航平投手やロベルト・オスナ投手ら、多くの戦力を獲得した。三笠GMも「難しい話ですよね」と受け止めている課題。勝利と育成のバランスについて、球団はどのようなスタンスでいるのか。
「来年勝つということと、中長期的に勝っていくという中での判断になりますけど。結果論的なバランス(の話)になりますけど、野手の方はしっかりと主軸で持って、近藤選手、柳田選手、今回の山川選手に活躍してもらうという形でチームをサポートしながら、投手の方が大きな世代交代になっていると思う。投手の方で若い選手がどんどん出てきてほしい。新入団でも5人の新しい選手を獲りましたし」
「中長期的に考えると、投手も野手も“一気にここで世代交代”というふうにするとどうしてもチーム力は落ちてしまう。今の現状のバランスとしては結果論にはなりますけど、野手はしっかりとした選手で攻撃力を担保した上で、若い投手を育てるというのがここ数年でのテーマ。そのためにも倉野コーチにも来てもらいましたので。投手の方で若い選手が伸びて、千賀くんの後を埋めるような確立ができたら、おそらく今の感じで言えば野手の方も高齢化して選手を替えていかないといけない時代も数年後には必ずくる」
何度も強調したのが、勝利も育成もどちらも求めるということ。2023年を戦ったチームの課題が投手にもあったことは、三笠GMも受け止めていたようだ。山川の獲得は、2024年以降のホークスに、一体どんな影響を与えるのか。