2軍で3割も昇格なし「もしかしたら」 編成部から電話…“淡々とした”トレード通告

ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】
ソフトバンク・西田哲朗広報【写真:竹村岳】

2017年オフに1対1のトレードで楽天からソフトバンクへ「すごく幸せなこと」

 自分も経験者だから、通った道だった。ソフトバンクは6日に高橋礼投手と泉圭輔投手が交換トレードで巨人に移籍することを発表した。巨人からはアダム・ウォーカー外野手が加入する。2人の移籍について「トレードってなかなか経験できることじゃない。必要とされることですごくモチベーションも上がると思います」と語るのが、西田哲朗広報だ。

 2010年から楽天でキャリアをスタートさせた西田広報は、2017年オフにソフトバンクに移籍。山下斐紹捕手との交換トレードで、新天地は福岡となった。「僕はその時、秋季キャンプに参加していなくて、残留練習に参加していたんです。年齢的にもキャンプに行く年齢で『トレードあるんちゃう』って噂もあって、2軍の試合に各球団のプロスカウトの方も見にきていたので、もしかしたらあるかなと思っていました」と振り返る。

 2017年、西田広報は1軍で15試合出場にとどまる。一方で、イースタン・リーグでは73試合に出場して打率.280と、一定の結果も残していた。「ファームでは、はじめの方はずっと自分が首位打者で。3割を打っていても、1軍昇格がなかったりしたので、それくらい打っていたらスカウトも見に来るんじゃないですか。(1軍で)使われてもいなかったですし」と西田広報なりに推測する。

 トレードが発表されたのは、2017年11月11日。その前日、球団編成部から電話がかかってきたという。スーツを着て出向いたのは、球団事務所。「応接室」に通されると、トレードを告げられた。「『今回呼んだのは、正式にホークスとの1対1でのトレードが決まりました。金額(年俸)は今のままで、山下選手とのトレードです』みたいな」と明かす。その後の大まかな流れも教えられたが、雰囲気は淡々としたものだったという。

住まいを決めるため仙台から2泊3日で福岡へ…先輩選手に「いい不動産、紹介してください」

 発表の4日後、11月15日には、宮崎県の生目の杜運動公園で行われていたソフトバンク秋季キャンプに足を運び、同日に入団会見を行った。主力選手は秋季キャンプを免除されていただけに、若手ばかり。西田広報も「ファームの選手は、1人も知らなかったです。若い選手は本当に誰も知らなくて、全く面識なかったです。栗原(陵矢外野手)を見た時も、体が細かったのでショートかと思ったりして」と懐かしそうに振り返る。

 キャンプの後の12月、住居を決めるために2泊3日で福岡を訪れた。「なかなか家がなかったんです」と苦労しながらも、なんとかその期間で契約した。楽天からのトレードが決まって連絡を取った1人が細川亨さん。ソフトバンクでもプレーした経験があり、2017年は楽天でチームメートだった先輩に「『何かあったら連絡してきて』と言われたので『いい不動産、紹介してください』って言って、紹介してもらいました」と笑いながら語る。

 家を決めるこだわりは「周りに誰もいないことと、新築で日当たりが良くて。野球選手ですから、寝ることも大事じゃないですか。だから家にはこだわろうかなという感じでした」と明かす。12月、1月での自主トレを終えて、引っ越しは年明けの1月20日。着実に新天地での準備を進めた。

 高橋礼と泉。鷹ファンに人気の2人が移籍することになった。トレードを経験した“先輩”として、西田広報は「さっきも礼から連絡が来たんですけど。相手球団から必要とされてお互いに『欲しい、欲しい』で成立するのがトレードですから。ルーキーイヤーとはまた違います。僕は幸せなことだと思いますよ。僕はすごくいい経験になりました」とエールを送っていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)