ソフトバンクは宮崎県の生目の杜運動公園で秋季キャンプを行っている。その中で王貞治球団会長は、若手たちに「自分の目指すバッティング」「バッティングの課題」「バッティング強化のために取り組むこと」の3点について、レポートの提出を求めた。それに対し王会長が返事を書き、レポートが選手の手元に戻った。それぞれがどんなことを書いて、どんなお言葉をもらったのか? 渡邉陸捕手、野村大樹内野手、野村勇内野手、柳町達外野手の4人に聞きました。レギュラーを目指す4選手。それぞれが抱く課題と、理想の打撃像とは?
――打球速度は計測してどれくらいですか。
「ヒット性の打球は160キロは超えていました。良くて、170キロいかないくらいです」
――打球速度は1つの指標となる数字。
「アベレージで160キロ後半を出していきたいです。そしたらホームランは入っていくので」
――大切に、参考にしたい数字。
「重点は置いていないですけど、打球スピードを上げれば勝手に(長打も)増えるんじゃないかと思うので。フライが上がれば打球速度は落ちますし、ゴロでも落ちるので。僕の場合はライナーを打つイメージで。それが角度がつけば入るイメージで、(角度が)つかなければ(外野の)間を抜くし、みたいなイメージでいます」
――王会長からのお言葉。
「めっちゃ嬉しいです。初めてこんなコメントとかもらったので、宝物ですよ、こんなの。書いてもらった紙は」
○野村大樹内野手
――野村大選手は、なんと書かれましたか?
「『近藤さんみたいな打者になりたい』と書きました」
――その理由は。
「日本でトップを争うバッターだと思いますし、選球眼とかも身に着けられたら、打率とかも上がってくるのかなと思いました」
――どんなお返事を、会長からはいただきましたか?
「ピート・ローズみたいに、ピッチャーに打ち返せるように頑張れ、っていうことは書かれていました」
――ここというところで、打ってもらえる打者になりたい。
「そうですね。そんな感じなので、極めていけるようにっていうところです」
――打球速度の計測もしている。
「もともと打球速度の平均は割と速い方なので、その最大値を上げることができるように。今も結構振り回すじゃないですけど、しっかり振っているので。最大スピードを上げられるようにと思ってやっています」
――スケールアップというか、打球の強さを求める秋になる。
「長打、速ければ速いほど抜けると思いますし、遅いよりは速い方がいいと思うので」
――ウエートトレーニングも重視して取り組んでいる。
「基本的に毎日あるので、そのメニューをやっています」
――王会長からのお言葉というのはいかがですか?
「響きますし、活躍して会長にも認めてもらえるようなバッターになりたいです」
――早実高の大先輩ですが、レジェンドですか?
「高校に銅像がありますね(笑)」
○野村勇内野手
――どんなことを書かれましたか?
「(王会長からは)2つありました。『手を早く』っていう、体を振らないように。あとは『ネットに向かって、ネットに当たらないように』っていうことでした」
――体のすぐ前にネットがあって、体の近くをバットが通るイメージですか?
「ネットに当たらないように、まあ壁でもいいんですけど、体から離れたら当たっちゃうので、当たらないように振れ、と書いてありました」
――直筆だったんですか?
「直筆かどうかはわからないですけど、書いてありました」
――選手から1度書いたものを提出して、それに返事が書かれて、返ってきたという経緯ですか?
「全員にはじめのミーティングで書いてくれと言われて書いて、会長が書いて、今日返ってきました。さっきもお会いしたんですけど、またそれ(書いていただいたこと)を言っていただきました」
――野村勇選手自身は、どんなことを書いて提出されたんですか?
「僕が書いた段階ですか? それは色々書いていますけど……」
――大まかで構いませんので。
「ざっくりやと、体を振ってしまうスイングをしないように。しないようにこのキャンプでいろんなスイングを試して、iPitch(最新のピッチングマシン)とかもあるので。色々試しながらっていうのを書きました」
――iPitchは、いかがですか? ファームの時もやられていた?
「そんなにはやっていないです。まだわからないですね。真っ直ぐしかやっていないので、これから(変化球と)ミックスしてどうなるかじゃないですかね」
――小久保裕紀新監督からもノートを書きなさいと言われて、進捗はいかがですか?
「書いていますよ。習慣にはなっていないですけど、まだまだ数日なので。続けていきます」
――字にするのも大変ですか。
「そうですね。文とか字にするのも大変ですけど、普段書くことがなかったので。ペンを握るのも1年間ほぼなかったので、頭の勉強にもなります」
――復習と予習の繰り返しですか?
「復習だったり、言われたこと、それをやってみて自分がどうだったとか、そういうところです」
○柳町達外野手
――会長へのレポートは何を書かれましたか?
「えっと……」(自ら紙を取り出して)
「(王会長からは)『ボールの下に入らないこと』『ボールの横っ面を叩くこと』でした」
――ご自身は何と書いた?
「僕ですか? えっと。『遠くへ飛ばすこと』。『ホームランを打つ』って書きました」
――長打の面が伸ばしたいところ。
「そうですね。足も遅いですし、盗塁ができれば単打でも需要があるかなって思うんですけど、やっぱりこれが盗塁ないってなると、シングルだけでは物足りないと思うので。やっぱり長打かなって思いますね」
――この2年、1軍で経験を積んで感じた課題。
「そうですね。佑京(周東内野手)さんみたいな足があれば、多分僕はもっと満足というか、出塁率もありますし。でもそんな足もないですから。ホームランってところがないとキツいかなって思います」
――ホームランを増やすというのは、活字にするとすごい方向性だと思いますが、ビジョンは描かれていますか?
「ホームランを増やすというか、打球速度が上がって角度がつけばホームランになりますし。打球速度が速ければ速いほど、野手の間を抜けてヒットになる確率も上がるので。やっぱり打球速度を上げることが一番目標にしています。あとは角度次第でホームランになれば」
――今、数値を計測していても、打球速度と長打の確率はある程度は比例している。
「そうですね。速くないと入らないので。159キロとかでも、角度と飛んだ場所が良ければ入ることはあります。170キロで25度とかだったら、大体どこでも入ると思います」
――この3日間の計測で、柳町選手の打球速度はどれくらいでしたか?
「165キロとか、それくらいでした。なかなか170キロは出ないです」