ソフトバンクの来季の新監督に小久保裕紀2軍監督が就任する。23日には福岡市内で就任会見が行われたばかり。これまでファームも徹底取材をしてきた鷹フルが、今季の“小久保語録”をまとめました。「ザ・いい人」「支配下になれない」「レベルの話じゃない、準備の話」など……。言葉の1つ1つから伝わってくる指揮官の姿勢、選手育成の信念に迫ります。(会員登録で2軍監督時代のコメントも見放題)
【ザ・いい人】
・3月17日のウエスタン・リーグ中日戦後、育成の川村友斗外野手について。
――川村選手がオープン戦で1軍を経験して感じる変化は。
「相変わらず『ザ・いい人』なので。いい人なんですよ。あまりがっつかないし、人を蹴落とすとか、足を引っ張るのは良くないけど、かき分けてでも1軍に行ってやるというのはあまりないタイプ。今回で欲が出てくればいいなというところですね。俺でもできるやん、みたいな。お坊ちゃんみたいな感じ……生まれも育ちも知らんけど」
【映画でもクサいくらい】
・侍ジャパンのWBC優勝について。
――WBCで日本が優勝した。
「最後、ちょこっと裏で見ましたけど、役者がそろったっていうか、こんなストーリーって映画でも考えたら、ちょっとクサいくらいの、なかなかないシーンでしたね。トラウトが最後で三振で、ダルビッシュから大谷にリレーなんて。でも本当に、本当に野球ってすごいなっていうか。栗山さんじゃないけど、すげえなって。昨日(メキシコ戦)のサヨナラ勝ちも含め、あのアメリカにアメリカの地で勝つわけですから。感動しました」
【1軍だったら乱闘】
・4月20日のウエスタン・リーグのオリックス戦後。3回2死一塁、左中間への打球で生海外野手と緒方理貢内野手が交錯。その後3失点を喫した。
――監督の現役時代も、投手を助けたいと思ってグラウンドに立っていた。
「助けたろうと思っていたし、あんなことがあったら平謝りでした。1軍だったら、多分チーム内で乱闘になっているくらいのものですよ、本当に。1軍は、投手と野手の仲が悪い時期は、めちゃくちゃ仲悪いので。お互いに生活がかかっている。点を取って打たれたら『しっかり抑えろや』って思うし、抑えてるのに点を取れなかったら『打てや』って思うし。西武の黄金時代なんて、投手と野手はめちゃくちゃ仲悪かったので。それが本当のチームですからね。勝つためにやっている。いつまでも仲良しこよしだけじゃ、ここからは抜けられないと思います」
【まだ折れています】
・5月18日のウエスタン・リーグのオリックス戦でリハビリ中だった川村友斗外野手が2軍戦に出場。
――PayPayドームでの3連戦。リハビリ組の川村選手を起用した。
「僕はあまりそこを気にしていないんで。西尾(歩真)とかは今日は5イニングまでがマックスだったんで、5イニングで代えました。川村は骨が折れた時点で、骨がくっつくまで待たなくても、自分が行けると思ったら行ってこいって話していたので。多分、レントゲン撮ったらまだ折れていますけど、できるから来ているんで。もう絶対使ってやる、すぐに2軍に呼んでやるって。明日からも2軍です」
「痛い痛いって言って、骨がくっつくまで待ってるヤツばかりなんで。そんなヤツいらんからね。骨は後遺症ないから、痛みさえ我慢したらプレーできるから、言ってこいって言ったら、アイツが言ってきました、だいぶ早く。いや普通ですよ、普通なんです、それが。あまりにもみんなゆっくりしているだけなんで」
【支配下になれない】
・7月5日のウエスタン・リーグの阪神戦後。
――仲田慶介選手が今日もマルチ安打。
「みんな打ったらそう思うでしょ。でも今日、仲田が1番怒られていたから。あのビーズリーでスチール(のスタートが)切れない。無死一塁の出塁で僕はバントのサインを出さないですよね。今日のメンバーで言うと、リチャード、野村大(大樹)、海野(隆司)、生海以外はみんな走れると思っているんで」
「あれだけクイックしない中でスタートを切れないようじゃ、支配下にはなれないです。レベルの話じゃないですよ、準備の話なんです。本多(雄一)コーチが丁寧に『このカウントでクイックはない』とか、試合前に全部伝えてくれているんですよ。そのシチュエーションでも走れないっていう。だったら凡退して帰ってきた方が怒られずに済んだんちゃうか、ぐらい怒られていましたよ。ヒット打ってるのに。でも、本当にそんなところなんですよね」
「あれで走れないと、誰も走れないです。あんなクイックをするピッチャー、日本球界にはほとんどいないんで。(渡邉)陸はその前に一、三塁で3回ぐらいスタート切りました。でも、あれも本多コーチからの後押しがあって走ったらしいんで、どこを目指して野球をやっているのかなっていう感じですね。現状で満足なんかなっていう感じ。現状で満足なら、あのプレーだと思うんで」
【貫き続けた指導法】
・ウエスタン・リーグ優勝に際しての単独インタビューより抜粋。
――Z世代の選手と目線を合わせることは難しかった。
「本来はここまで、コミュニケーションを取らなくてもいいかなと思いながら、意外にしゃべってしまっているという。そこは自分も、接し方を変えたというところかもしれないですね。ただ、コーチを飛び越えて指導したことは1回もないです。話すのであればコーチに『こういう話をした』っていうことを言うし、もしくは指導しようとした時には、担当コーチを必ず横に置いて、僕がしゃべっていることを聞かせるということはしました」
「結局、僕と選手が直接してしまうと、選手からすると上司が2人になりますよね。これが一番良くない。『監督にわかってもらっているから、別にいいんですよ』っていう構図になることが良くないんです、“1個飛ばし”が。コーチの権限、存在意義がなくなって動きが死んでしまう。それは絶対にないように、とやってきたのがこの2年間ですね。コーチの権限と責任はしっかりと守る。僕が直接、選手とやってしまうと、そういうことが起こりうるということですね」
【厳しい言い方はワザと】
・単独インタビューより抜粋。
――ストレートな発言が印象的。
「見ているなってわかっているので、あえてマスコミさんを利用させてもらっているのは、僕の中ではある。『選手に対する批判というか、コメント、マイナスな点は必ず本人に言う』っていう約束事を(ある監督が)していたっていうコピーを、15、16年前にもらったことがあるんですけど、僕はどっちかと言うと逆で、オシムさん(元サッカー日本代表監督、イビチャ・オシム氏)派で。コメントは選手が見ているだろうという前提のもとで、どっちかと言うと、キツい言い方をわざとしています。実際に会った時は、そこまで強い言い方はしていないです」