感情は自宅に持ち帰らない…柳町達を支えた家族の存在 打撃面で感じる確かな手応え

ソフトバンク・柳町達【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・柳町達【写真:荒川祐史】

14日からクライマックスシリーズが開幕…家族のためにも「いい報告が」

 試行錯誤の中でも、支えは家族の存在だった。9日のオリックス戦(京セラドーム)でレギュラーシーズンの全日程が終了したソフトバンクは、14日からクライマックスシリーズを戦う。大卒4年目のシーズン、柳町達外野手は116試合に出場し、打率.257、0本塁打、34打点。家族という確かなモチベーションを得て戦ったレギュラーシーズンを振り返った。

 2022年は107試合に出場して89安打を放った。近藤健介外野手の加入があったものの、さらなる飛躍を期待された2023年。しかし、オープン戦では打率.185と振るわず、開幕1軍を掴むも、わずか1日で登録抹消。それでも「もう終わったことですから」と前だけを向き、4月23日に1軍再昇格後は、限られた出場機会の中でも結果を残し続けた。柳町自身も「離脱なくできたことが一番よかった」とうなずく。

 終わってみれば、昨年の107試合よりも9試合、出場を増やした。打率こそ下がったものの、打点は昨季の32打点から微増。本塁打は2年連続で0本だったが、二塁打も14本から18本に増やした。一方で、課題が残ったのはサウスポーへのアプローチ。対右投手打率が.273なのに対し、左投手に対しては打率.190。相手先発によって、スタメンを外れることも珍しくなかった。

「課題はいっぱいありますけど、バッティングは左投手の精度をもっと上げること。あとは守備走塁をレベルアップしないといけない」と具体的に振り返る。高い身体能力で見せるプレースタイルというよりも、最大の持ち味はバットコントロール。だからこそ、自分は誰よりも打ち続けないといけない。「どのシーズンもそうかなと思います」と、自分にとってバットで結果を出すことこそが、レギュラーへの道のりであると理解している。

 打撃成績の中で特に向上した数字が、四球。昨年の38から58に増加し、出塁率も.357から.375にまでなった。「去年よりも確かに増えましたね。そこは良い点というか、ちゃんと冷静に打席に入れた部分ではありました」。レギュラーに向けて確かな足掛かりとなった2022年を踏まえ、今季に生きた考えは、打席の中での“使い分け”だと言う。

「2022年は初対戦の投手が多かったんですけど、今年は見たことのある投手も多かった。球筋というところのイメージはつきやすかったです。あとは打つ球と、打たない球をハッキリさせられたのはありました。それが一番(選球眼という点においては)大きいかなって思います。(打ちに)行くところと行かないところを使い分けられたら一番だと思うので、僕みたいな打者は全部行っていい打者じゃないと思うので」

ソフトバンク・柳町達【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・柳町達【写真:荒川祐史】

 家族が、常に前を向かせてくれた。2022年オフに結婚したことを公表。今年の9月には第1子となる男児が誕生し、「ずっと一緒にいた奥さんは、支えてくれましたし、息子が生まれてからもすごく頑張ろうと思ってやっていました」と存在の大きさを語る。東京都内の病院で出産にも立ち会うことができ、「泣きそうになりましたけど、僕がわんわん泣くのは違うと思って我慢しました」。父親になった日のことは、今でも鮮明に胸に刻まれている。

「家族を持ったからには、ちゃんと結果を出さないといけないですし、稼がないといけない立場でもある。(家族と野球は)直接的ではないかもしれないですけど、力になったのかなって思います」

 自宅では野球の話は「全くしない」と言う。「あんまり持ち込まないようにはしています。(ミスした時は)悔しがりはしますけど、明日は明日と思って。あんまり感情は出さないようにしているじゃないですけど、帰ったら忘れるように」。試合に関しての振り返りや、体のケア、気持ちの整理は、球場で済ませる。家に帰れば、家族との時間でリラックスをしているようだ。

 息子が誕生して、1か月以上が過ぎた。「シンプルに体が大きくなってきましたね」と成長を感じつつ、「生まれたての時は僕に似ていたんですけど、ちょっとずつ半々になってきました」と笑顔で語る。夜泣きもあるだけに「起こされちゃいますけどね」と照れ笑いするが、そう話す表情もうれしそうだ。家族のためにも、2023年のラストスパートを駆け抜けたい。

 14日の相手先発は佐々木朗希投手に決まった。短期決戦に向けて柳町は、「できるだけ、長く。そして、まずはいい報告ができるように、無事に終われるように、最高の形で終われるようにやれたらいいなって思います」と誓った。家族を幸せにするために、自分の技術で勝負をしていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)