【連載・今宮健太】「何もできなかった」 脳裏に焼き付く苦い記憶…12連敗の後悔

ソフトバンク・今宮健太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・今宮健太【写真:荒川祐史】

7月の泥沼12連敗「自分がどこかで打っていたら勝った試合もあった」

 鷹フルがお届けする主力選手による月イチ連載に、新たに今宮健太内野手が登場します。最終的には3位でクライマックスシリーズ(CS)へと進むことになった2023年シーズン。選手会長として戦ってきた1年をどう振り返るのか。脳裏に焼き付く後悔。チームリーダーとして感じる思いを明かした。

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 10月9日に京セラドームで行われた、レギュラーシーズン最終戦のオリックス戦。勝てば自力で2位を決められたホークスは1-4で敗れた。翌10日に行われたロッテ対楽天戦でロッテが勝ったため、勝率わずか1毛差で3位に転落。CSの本拠地開催権を逃し、14日からのCSファーストステージは敵地ZOZOマリンスタジアムで戦うことが決まった。

 今シーズン、脳裏に色濃く焼き付くのは、7月に喫した泥沼の12連敗だ。12試合のうち3得点以下が11試合。接戦の末に落とした試合も多く「自分がどこかで打っていたら勝った試合もあっただろうし、チームとしてもうまく機能しなかった。自分としても選手として何もできなかった」という。1人の選手としても、そしてチームの勝敗の責任を担う中心選手としても悔いが残った。

 シーズンを通しても後悔が募る1年だった。昨季はキャリアハイとなる打率.296を残し、今季はそれ以上の成績を本人も、周囲も期待した。だが、143試合を戦い終えて残ったのは打率.255と昨季を下回る打率。9本塁打、48打点は昨季を上回ったものの、到底、納得いくものではなかった。

「良い悪いがはっきりした1年だったなと思います。昨年はある程度、年間を通して良かったんですけど、今年は初めから良くない中で入っていった。そんなにうまくいくわけないだろうなと思って入ってきた1年だったので、その考えがちょっとネガティブだったのかなと思います」

 昨季は大振りをしない、コンパクトなスイングを意識したことが結果につながった。だが、今年はそれが違う方向にいってしまった。「すごく小さくなってしまった。当てにいくような感じがあったので、そこが昨年とは違って、かみ合わなかったところなのかな、と。打っているときってすごく力強くスイングしているんで……」。コンパクトさを求めるがあまり、力強さが消えていた。体調不良で3度、離脱したことも悔いが残った。

 2009年のドラフト1位で入団し、今季でプロ14年目。いつまでも若い印象が残るが、今年7月には32歳になった。加齢による肉体の変化も「出ていると思います」という。プレーを通じて「自分の中で動けていたものが動けなくなったとか、正直感じている部分がある。送球の強さってのも落ちているとは思いますけど、そこは認めながら、自分でできることを全力でやっています」と感覚を明かす。

 今季、巨人の坂本勇人内野手がシーズン途中、チーム事情もあってショートからサードへとコンバートされた。リーグで指折りの遊撃手である今宮にとって憧れの存在だった3歳年上の坂本が34歳となり、三塁を守るようになったことは、決して他人事ではない。今宮自身にも、間違いなく“その時”は近づいてきているからだ。

「練習量であったり、質であったりっていうのを変えていきながら、1年1年長くとは思っていますけど、自分もそうじゃなくなるときは来ると思う。宮本(慎也)さん(元ヤクルト)にしても坂本さんにしても、打つ方がある程度良かったからこそサードで戦力になれた。僕もそういうふうに、他を守れて試合に出るっていうところはベストだと思うんですけど、まだできるかなって思う。ショートじゃもう駄目だよって言われるのであれば、そこは考えないといけないですけど、できれば1年でも長くと思っています」

 ハッキリと実感している肉体の変化。年齢による衰えを認めつつも、いまできる範囲で全力を尽くしている。14日から始まるクライマックスシリーズ・ファーストステージ。オリックスへの挑戦権をつかむため、まずはロッテに立ち向かう。その先頭に、今宮は立つ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)