鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、新しく和田毅投手に登場していただきました。9月の後編、テーマは「チームの現状」です。今季は開幕からローテーションを守り続けて6勝を挙げています。チーム最年長の左腕の目には、今のチーム状況はどのように映っているのでしょうか「物足りなさ」という言葉の真意に迫ります。
チームは130試合以上を消化して、勝率5割前後を行き来している。20日にはオリックスがリーグ優勝。2位に10ゲーム以上の差をつけ、リーグ3連覇を許してしまった。オフに大型補強を敢行して、3年ぶりのV奪回が厳命されたはずだった今季。2月には42歳を迎え、最年長選手として和田は、現状をどう受け止めているのか。
「物足りなさというか、当然3位にいるチームではないと僕は思ってますし、やっぱりオリックスさんと優勝争いをしているべきチーム、していなきゃいけないチームだと思うので、そういう意味では、他のチームが強い弱い関係なしにホークスは優勝争いしないといけないチームだと僕は思っているので、そういう物足りなさというか、言葉にするのは難しいですね」
今季がプロ21年目。城島健司や斉藤和巳、松中信彦らが支えていた2000年代をはじめ、秋山幸二監督のもとで新しい戦力が台頭した2010年代も知っている。チームの浮き沈みを、誰よりも近くで見てきた1人が和田だ。「難しいんですけど、今の時代といえば時代ですし、昔とは違いますから」とリスペクトを込めつつ、慎重に言葉を選びながら、今のチームを表現した。
「昔はもっと目が血走っていたというか、ベンチで。その空気は、昔と今っていうふうに考えればですね、ないのかな、と。でもその代わり、昔にはなかった劣勢での元気さとか、良い意味での切り替えの仕方とか、そういうのは、今の子たちの方があるのかなと思う」
小久保裕紀2軍監督も現役時代を振り返り「投手と野手は、仲悪い時期はめちゃくちゃ仲悪いですからね。お互いに生活がかかっているので」と表現したことがある。投手と野手は“持ちつ持たれつ”の関係性。助けられる時もあれば、当然、結果的に足を引っ張られてしまうこともある。スタメンに並ぶ選手それぞれが圧倒的な能力を持ち、結果を残していた2000年代。その時代にしかないような緊張感が、きっとあったのだろう。
和田なりの目線で、ピリついた空気に変化をもたらした1人が、松田宣浩内野手(巨人)だと言う。3月のオープン戦で対戦した際も「代えがいないというか、マッチ(松田)ほど存在感のある選手はなかなかいない」と松田の存在を表現していた。チームが勢いに乗る時はもちろん、苦しい時ほど声を出してナインを引っ張ってくれたリーダーが、今のホークスの礎を築いてくれた。
「マッチはね、元気だけっていうか、プレーもそうですけど。チームを明るくするっていうだけじゃないので、当然プレーやバッティングもそうですけど、言える人なんで、いい意味で。ここぞというときに喝を入れられる選手でもあるので。そこはマッチにしかできないことでもあったのかなと思います」
7月下旬には、中村晃外野手が発案者となり千葉市内で決起集会が行われた。選手それぞれが現状を変えようと必死に戦う中で、和田も「選手同士で、っていう。それができるのがマッチや内川(聖一)、ウッチーだった」とかつてのチームメートたちと背中を重ねる。特に松田には「元気だけではない、その人のカリスマ性なのか、何かわからないですけど。それはあった」と和田も心からリスペクトするようなリーダーシップが確かにあった。
和田はルーキーイヤーの2003年にリーグ優勝に貢献した。入団から5年連続で2桁勝利を挙げる中で、2006年から4年間は優勝から遠かった。2006年が1年目だった松田も含めて「それだけ勝ちを知ってる選手でもあるし、優勝してる選手でもある。自分もそうでしたけど、こうなってきたらまずいっていうのをわかっている選手」と、常勝時代も、そうでない時期も知っている。苦しい時間をともにしたチームメートの存在は、今の和田にとっても尊い。