試合中に把握していたライバルの盗塁数 周東佑京が密かに抱いていた“活躍の自信”

ソフトバンク・周東佑京【写真:小林靖】
ソフトバンク・周東佑京【写真:小林靖】

13日の西武戦で2つの盗塁を決めて楽天の小深田に並ぶリーグトップタイに

■ソフトバンク 9ー3 西武(13日・ベルーナドーム)

 遅ればせながら、頼もしきリードオフマンになりつつある。13日に敵地ベルーナドームで行われた西武戦に9-3で逆転勝ちしたソフトバンク。この試合で5打数3安打1打点2得点2盗塁とチームを牽引したのが、周東佑京内野手だった。

 初回は一ゴロに倒れたものの、3点を追う3回の第2打席で右翼への二塁打で出塁。続く三森大貴内野手の2ランで1点目のホームを踏んだ。1点リードの7回には内野安打で出塁すると、今季28個目の盗塁に成功。近藤健介外野手の適時打で生還すると、8回には左前適時打。さらにこの日2個目の盗塁も決めた。

 チームは西武に2試合続けて逆転勝ち。周東自身も7試合連続で1番でスタメン出場し、3試合連続でマルチ安打。ここ3試合は15打数8安打、打率.533とバットに勢いが出てきている。1番・周東、2番・三森と、藤本博史監督が構想として描き続けてきた1・2番が、残り試合わずかにしてようやく形になりつつある。

 自信はあった。周東自身の中では8月頃からバッティングの状態に手応えを感じ始めていた。「試合の中でのボールの見え方も悪くなかったですし、バッティング練習中もいい打球が打てている感覚も増えていました。自分の中で、いつ出てもいけるっていうのがあった」。出番がありさえすれば、結果は出せる――。そんな思いを抱えながら、チャンスを待っていた。

 8月の終わりに中堅のレギュラーだった牧原大成内野手が故障で離脱。奇しくも、そこから程なくして、周東が中堅に入るようになった。もともと外野の守備と走塁は一級品。打撃面が課題で、なかなか代走以外の出場機会を得られなかったが、「ちょうど打てている時にタイミングよく出られるようになった」と、打撃の状態と出場機会がうまく噛み合ったことで、最近の活躍に繋がっている。

西武戦で盗塁を成功したソフトバンク・周東佑京(右)【写真:小林靖】
西武戦で盗塁を成功したソフトバンク・周東佑京(右)【写真:小林靖】

 この日は2つの盗塁も決めた。今季29盗塁とし、この日1つ盗塁を決めた楽天・小深田大翔内野手と並んでリーグトップタイになった。2020年以来、3年ぶりの盗塁王を争うライバルの動向は否が応でも気になるもの。この日も5回にチームスタッフに「(小深田は)走りました?」と確認していたほど。相手が先に29個目の盗塁を決めていたことも実は把握していたという。

 周東が塁に出れば、当然、相手バッテリーも警戒する。盗塁を試みることも容易ではないだけに「別に欲しがっても相手があることですし……。そんな簡単にできるものでもないと思っているので、行けるときに行ければいいのかなと思います」と、躍起になっているわけではない。チャンスがあれば狙う、という姿勢で塁上にいる。

 常にレギュラーで出場することへの渇望を口にしていた周東。残り試合もあと僅かとなったタイミングで掴みつつあるスタメンの座に「もっと早くこういう形で出れたら良かったなと思いますけど……」と本音も溢れる。

 オリックスの背中は遠いものの、2位のロッテとの差は0.5ゲームに縮まった。「チームが本当に4位になるのか、2位になるのか、3位になるのかという状況で出られているのはいいことだなと思いますし、もっと点に絡んでいきたいなと思います」。チームを牽引する存在である“リードオフマン”。周東がその役割を十二分に果たせば、ホークス打線の破壊力は増していく。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)