大きなアピールの一発だった。ソフトバンクは13日、敵地ベルーナドームで西武に9-3で逆転勝ち。2位のロッテが楽天に敗れたため、その差は0.5ゲーム差に縮まった。この試合、5点リードで迎えた9回にトドメの一発を放ったのが、途中出場で三塁に入っていた野村勇内野手だった。
先頭の近藤健介外野手が中飛に倒れ、1死走者なしで打席へ。西武の5番手・水上が投じた初球の真っ直ぐを完璧に捉えると、打球は右翼スタンドへ一直線に飛び込んでいった。同じベルーナドームで行われた7月2日の西武戦以来、約2か月ぶりのアーチとなった。
「練習でやってることをやるだけ、初球からいこうと思っていました。最高の結果になって良かったです。感触はもう完璧でした」。自身も納得の一打となり、チームにもダメ押しの1点をもたらした。
昨季、ルーキーながら10本塁打を放った野村勇だが、今季は苦しいシーズンを送る。腰の怪我で出遅れ、6月の1軍昇格後もなかなか状態が上がらず、再降格も味わった。ここまで40試合の出場にとどまり、スタメンは左投手が先発する試合がほとんどで、ここまで17試合しかない。直近でスタメンに名を連ねたのは9月5日のロッテ戦に遡る。
9月6日には3年目の井上朋也内野手が1軍初昇格。即スタメンで起用されると2安打を放ち、その後も6試合でサードのスタメンを張った。後輩が試合に入っていく姿を見て、思うところがないはずはない。野村勇は「悔しい気持ちで見ています」と心中を語る。
三塁のポジションを争う立場として、大きな一本となったのは間違いない。スタメンで起用されるのは左投手の時がメイン。なかなか打席に立つ機会もなく、対戦打率.074だった右投手からの本塁打は大きなアピールになったはず。「別に右投手は苦手じゃないので」というのが、野村勇の思いだ。
ルーキーながら10本塁打を放ったそのパンチ力で、ファンからの期待は大きい。「(首脳陣から)左を打たないといけないって言われているので、そこを打たないといけない」と言いつつも「今日(右から)打てたので、また次チャンスがあると思うので、そこで打ってどんどんチャンスを増やしていきたいです」と口にする。
このままやすやすと後輩にスタメンを明け渡していいはずがない。自分だって負けていない。そんな野村勇の思いが詰まった一発だった。