なぜスチュワートは打たれる? 8月以降まるで“別人”…データに表れる明らかな異変

ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニア(中央)【写真:竹村岳】
ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニア(中央)【写真:竹村岳】

4回途中4失点でKOされ、2試合連続で5回持たずマウンドを降りたスチュワート

 ソフトバンクは12日、敵地・ベルーナドームでの西武戦に延長11回の激闘の末に、8-4で競り勝った。同点で迎えた延長11回1死一、二塁で近藤健介外野手が左中間フェンス直撃の2点適時二塁打を放って激戦に終止符を打った。4位の楽天が敗れたため、その差は2.5ゲーム差に広がった。

 息詰まる接戦での勝利は大きいが、代償もあった。延長11回までに費やした投手は9人。ブルペンに残っていたのは武田翔太投手、ただ1人だった。まさに総力戦だったが、これほどまでにリリーフを注ぎ込むことになったのは、先発のカーター・スチュワート・ジュニア投手が4回持たずにノックアウトされたことが響いた。

 初回に打者9人の猛攻で4点を奪い、優位に試合を進めていたはずだった。だが、スチュワートは2回に犠飛で1点を失うと、さらに4回につかまった。2死満塁から西川、源田に連続タイムリーを浴びて一挙に3失点。同点に追いつかれてマウンドを降りることになった。

「3回までは何とか自分らしい投球ができましたが、4回は情けない投球をしてしまった。申し訳ないです」。こうコメントを残したスチュワートだったが、4回途中8安打4失点。これで2試合連続で5回持たずにKOとなり、本来の姿とはかけ離れた投球が続く。

 ローテーションに定着し出した6月中旬から7月にかけてのスチュワートと、8月に入ってからはまるで“別人”だ。それはデータにハッキリと表れている。

 その要因の1つとして挙げられるのが、空振りを奪えなくなっている点だ。この日、空振りを奪ったのは88球のうち、わずか7球だけ。変化球が3球、ストレートが4球で、ことごとく西武の打者にバットに当てられていた印象だ。3回までは1失点に抑えていたものの、序盤から捉えられた打球が多く、内容は良くなかった。

 ただ、これは突然に始まったことではなく、8月に入ってから徐々にその傾向は出てきていた。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータによると、打者がスイングした際にバットに当たる確率を示す「Contact%」は7月26日のオリックス戦では67.3%。だが、8月に入って75%、80%と悪化していき、9月5日のロッテ戦では82.7%、この日も82.5%だった。なかなか空振りを奪えなくなっているところが、スチュワートの苦戦に繋がっている。

 なぜ空振りを奪えなくなったのか。原因として考えられるのは疲労によるボールの“質”の低下だ。特にストレートにそれが如実に表れている。7月までは153キロ超をマークしていたストレートの平均球速は8月に入って150キロほどに低下。8月13日の日本ハム戦では153.2キロと一度盛り返したが、その後は150キロそこそこが続く。この日もストレートの多くが150キロ前後で、平均球速は150.9キロにとどまった。

 球速の低下だけではない。調子が落ち始めた8月以降、スチュワートのストレートは縦方向の変化量が落ちていることがデータにも表れているという。疲れから来るフォームの微妙な狂いで回転効率が悪化し、本来、浮き上がるような軌道を描く真っ直ぐが、そうではなくなってしまっている。ストレートの失点増減を示す「wFA」も8月の試合はマイナスが続き、この日浴びた8本の安打のうち6本がストレート。真っ直ぐの質が悪ければ、変化球も生きない。真っ直ぐがバットに当たると分かっていれば、打者は意識をより変化球に振り向けてケアすることができるからだ。

 スチュワートが1軍のローテーションで投げるのは、今季が初めての経験だ。1軍と2軍ではプレッシャーの違いもあって、疲労度もかかる負担も桁違い。いきなり1年目から安定してパフォーマンスを発揮することは並大抵のことではなく、しかも任されているのは、より一層、負担のかかる1週間のアタマ。夏場の暑さも相まって、疲労が蓄積していても、何ら不思議ではない。

 今季も残り19試合。スチュワートが先発できるのもあと4、5試合か。残る試合をローテ通りに投げさせるか、それとも一度、休養を挟んで間隔を空けるのか。クライマックスシリーズ進出を争う最終盤のポイントになりそうだ。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)