ソフトバンクは2日、敵地ベルーナドームでの西武戦に6-2で快勝した。6回途中まで投げて2失点で5勝目をマークした板東湧梧投手をリードしたのは甲斐拓也捕手だった。4回にリードを広げる9号2ランを放つなど、攻守両面で板東を後押しした。
甲斐は紛れもなくソフトバンクの正捕手。ただ、この日のスタメン起用は、少々意外だった。先発の板東と、過去2度の登板でバッテリーを組んでいたのは谷川原健太捕手だった。8月19日の西武戦では6回3安打2失点、同26日の楽天戦では6回途中2失点と、どちらも好投していた。
また、この日の西武の先発は右投手の高橋。甲斐は今季、高橋から1本もヒットを打てておらず、投手の左右を見ても、谷川原のスタメンは十分に考えられた。にも関わらず、スタメンに名を連ねたのは甲斐。なぜ谷川原ではなく甲斐だったのか。その思惑について、森浩之ヘッドコーチを直撃した。
「申し訳ないけど、谷川原の昨日の連続の3球三振を見て、監督と協議した結果、思いきって拓也で行こうか、と。やっぱり工夫もなく同じ打席で3球三振しているというのは考えもの。谷川原にも釘は刺した。三振をするにしても三振の仕方がある。三振全てを怒っているわけじゃなくて、工夫もなく同じ形で三振しているのはどうかと思う、と」
森ヘッドコーチが指摘したのは、0-6で完敗した1日の同戦だった。4回までに6点のビハインドを背負い、ホークスベンチは5回の攻撃で早々と甲斐に代えて、谷川原を代打に送った。2死一塁の場面で、西武先発の平良の前に見逃し、空振り、空振りで3球三振。7回2死満塁のチャンスで迎えた2度目の打席でも見逃し、空振り、空振りで、2打席続けて3球三振に終わった。この連続三振が首脳陣の考えに影響を与えた。
森ヘッドコーチはこう続けた。
「1打席目は構わない。球が速いと分かって、2打席目にバットを短く持つなり工夫が見れたら見え方は違う。同じようにして、初球を見送って、ボール球を空振りして、と同じような打席を続けたら、考えないといけない部分あるよ、と。学んでもらいたい」
2打席連続で空振り三振に倒れたことが問題ではない。初球を見逃し、2球目、3球目と空振り。しかもボール球に手を出しての空振り、と、2打席続けて同じような内容の3球三振を喫したことが、首脳陣には気がかかりだった。好投手の平良が相手だけに、打席の中で何かしらの工夫を見せてほしかった。
この日のスタメンは甲斐に譲ったものの、決してチャンスが無くなったわけではない。森ヘッドコーチは「これから先も使うよ。試合に出ていく中で大いに学んでいってもらいたいし、いろんな工夫をしてもらいたい。明日だってチャンスがあるかもしれない。(相手の先発は)與座だしね」という。
3日の先発は右アンダースローの與座。スタメン出場した8月19日の西武戦で谷川原は左中間への適時二塁打を放っており、その相性を買われて、スタメン起用される可能性もある。甲斐が本塁打も放ち、結果的に当たる形となったこの日の捕手起用。その裏には首脳陣のこんな思惑があったのだった。