鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、板東湧梧投手の7月前編、テーマは「前半戦」です。チームが43勝37敗2分けで終えた前半戦。板東投手自身も「悔しい思いの方が強いです」と振り返ります。次回「7月後編」は7月29日(土)に掲載予定です。
23日のロッテ戦(ZOZOマリン)に先発した板東は、ここまで24試合に登板して3勝2敗、防御率3.21。前半戦を振り返った第一声は「悔しい思いの方が強いです。あまりうまくいかなかったというか」と話す。自分自身の数字を見ても「試合数ってところは中継ぎだった分、多くも少なくもないというか……。自分がイメージしていたのは先発だったので、そこでもうまくいかなかったし、中継ぎでも思った投球ができなくて」と、葛藤も抱えながら戦っていた。
板東は昨オフから先発ローテーション入りを掲げ、何度も「シーズン15勝」が目標だと公言してきた。オープン戦では2試合に登板して防御率7.71と結果を残せず。復調の兆しを見せたものの、最後は高橋礼投手との“一騎討ち”に敗れて、開幕ローテ入りをつかめなかった。2023年シーズンの半分を終えても「一番印象的だったのは……」というのは、この時の悔しさだ。
「開幕に『先発じゃない』と告げられた時ですね。悔しいという意味で、そこは一生忘れないです。その時は、自分の中でも状態が上がって、やり残したことはないと思っていたところだったので。やっぱり悔しかったですし、その分やってやろうという気持ちもありました」
結果的に板東は、開幕2カード目にあたる4月4日に中継ぎとして出場選手登録された。開幕ローテに入れなかったと、告げられたシーンを「最初は学(斎藤学投手コーチ)さんに言われました。『中継ぎでいってもらう』って。その後に、モヤモヤしている時に和巳さん(斉藤和巳投手コーチ)に改めて声をかけてもらって、その時にまた悔しい気持ちがあふれてきました」と具体的に振り返る。
プロである以上、起用は首脳陣が決めること。もちろん板東も理解していることだが、個人的に掲げてきた目標を達成できなかったのが現実だった。「まだベンチ(に入る)まで時間があったので、徐々に気持ちも入れていったんですけど、その時はめちゃくちゃ悔しくて、引きずっていました」というほど。「これがあったからって言えるようにやらなくちゃいけないなって」と受け止めているが、今も自分を突き動かす悔しい気持ちだ。
待望の初先発は6月15日のヤクルト戦(神宮)で4回3失点だった。4度の先発登板で1勝2敗、防御率4.15。「どの試合も大事なので、それを言えば初先発の時だってめちゃくちゃ悔しいですし、2戦目も同じことをしてしまった。どの試合も同じくらい悔しいです」と、一戦必勝の姿勢が板東らしい。今は先発の一角ではあるものの、まだまだ確立していかないといけない立場であることは、板東自身が一番わかっている。
開幕以降から継続しているのが「メディテーション」だ。日本語で「瞑想」を意味する言葉。昨年も行っていた取り組みで、今季も改めて3月から先生に来てもらってセッションを受け始めた。最近では初先発だった6月15日の前後に受けたといい「気持ちの波が自分の中ですごくあると改めて感じているので。今はいい感じですけど、月1くらいでセッションを受けています」と明かす。
マウンドの上で表情に出すことは少ない板東だが、強気も悔しさも人一倍抱いてマウンドに立っている。前半戦を終えた時点でプロ通算107試合に登板。経験を積んでも、気持ちを整理して試合に臨むことはいまだに難しい。「結果が残っている時は誰でも気持ちはいいですけど、悪い時こそ人間の本当の姿が出るというか。それは自分でも感じますし、どう乗り越えるか」。グラウンドの内外からキッカケを探して、自分だけの目標に突き進んでいる。
1人で行うメディテーションも日課の1つだ。毎夜、寝る前に座禅を組んで、呼吸を整える。「(やったら)めっちゃ寝れますね、僕は。逆にイメージしまくるメディテーションもあって、興奮しすぎて寝られない時もあるんですけど」。イメージをひたすら繰り返し、自分自身をマウンドでコントロールできるように試行錯誤を重ねているシーズンだ。
「いろんな方法があって、瞑想の種類なんですけど。今の自分はこれをやった方がいいってものを、教えてもらった中から選んで。1セット5分くらいなんですけど。ガイドの音声ももらっているので、それをやる時と、自分の気持ちだけでイメージしてやる時と。今の状態を見ながら、分けてやっています」
後半戦初先発となった23日のロッテ戦は5回を投げて2失点だった。チームの連敗は止められなかったものの、決して内容は悪くなかった。3年ぶりのリーグ優勝を狙う後半戦。板東は先発ローテの一角を最後まで担って優勝に貢献するつもりだ。