柳田悠岐だって「下手だった」 2軍首脳陣が語るドラ3生海の真の守備力と無限の可能性

ソフトバンク・生海【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・生海【写真:藤浦一都】

井出2軍守備走塁コーチは初めて生海の守備を見て「ひどいな、中学生レベル」と評した

 22日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦で、ソフトバンクのドラフト3位ルーキー生海外野手が1軍デビューを果たした。初めて出場選手登録され、即「7番・右翼」で初スタメン出場。5回の第2打席では記念すべきプロ初安打も放った。

 打力が持ち味の生海は、この時9連敗中だったチームに新風を吹き込む意味も込めて、1軍に昇格した。実際、打撃に関してはルーキーながら2軍でも非凡なものを見せており、小久保裕紀2軍監督も“打”での能力は早くから認めていた。2軍で4番を任され、豪快なスイングと勝負強さでファンを魅了してきた。

 記念すべきプロ初スタメンで、小久保2軍監督も「心配です」と語ったのが守備面だった。守備・走塁の課題は明白で、徹底して練習を積んでいるところだった。さらに今回は2軍でも一度も守っていない右翼。打線のカンフル剤として、多少の守備の粗さには目をつぶっての起用だったが、1軍で継続して活躍するには“最低限の守備力”は不可欠だ。

 生海自身も不安を抱えて臨んだ一戦だった。それは、自らの課題も理解しているからこそだろう。実際、課題と指摘される守備力とは、いかほどなのか? 長年ホークスをコーチとして支え、今季はファームで生海の守備を指導してきた井出竜也2軍外野守備走塁コーチに話を聞いた。

 井出コーチは、初めて2軍で見た生海の守備を「正直、ひどいな。中学生レベル」と評していた。2軍の選手たちの守備力は井出コーチの熱血指導により、日に日に向上している。そんな中で「なんとか最低1軍では守れるぐらいにはなったかな、生海を除いてね」と、まだまだ時間が必要だと感じてきた。

 それでも上達しているのは間違いなく、小久保2軍監督も井出コーチも認めている。井出コーチは「徐々に(良くなってる)ね。今年が終わるぐらいまでには、なんとか1軍で最低限守れるレベルに上げたいけど」と計画を語り、最大の課題として「打球感がない」ところを挙げていた。

 大学時代は2年間、野球を離れた時期もあった。そして、アマチュア時代は守備を専門的に学んだこともない。持ち味は打力だったため、守備に力を注ぐことがなかったのだ。「とにかく守備に興味がなかった。そこにまず興味を持たせて、打つだけじゃないですよっていうところをわからせて。専門的に習ったこともないだろうし、本当に初心者っていう感じでこっちは見ている」と井出コーチも話していた。

 プロになるような選手でも、アマチュア時代に外野守備を専門的に学んできた人はほとんどいないと、井出コーチはいう。個人差こそあるものの、守備はやればやるだけ「絶対にうまくはなるんで、誰でも」とも。生海の守備の現状の評価は決して高くないが、同じように成長してきた選手の“前例”がある。

 その1人が高卒3年目となった笹川吉康外野手だ。“ギータ2世”として期待される笹川も、入団時は生海と同じだった。「吉康も(生海と)一緒。去年の時点では吉康が一番下手だった」と井出コーチ。笹川も打力が持ち味で、守備についてはあまり関心が無かった。ただ、笹川自身が「一番下手」と言われ、悔しい気持ちを持ち、守備と向き合った。滅多に褒めないと言われる井出コーチも「レベル的にはもう真ん中より上にはいる」と成長を認めるほどだ。

 もっと振り返れば、チームを背負う主砲の柳田悠岐外野手も、決して守備はうまい方ではなかった。井出コーチは「柳田が入ってきた時、俺は1軍にいたから、よーいドンからは見てない。でも、1軍に預かるようになってから見ても、正直下手だった」と振り返る。日本を代表する選手となった柳田は、そこから6度もゴールデングラブ賞も受賞するほどに成長した。

 柳田や笹川の前例もある。生海にはまだまだ“伸びしろ”がたっぷりとある。1軍の首脳陣も指摘していたように、確かに守備面と走塁面は大きな課題。ただ、ロマンあふれるバッティングは大きな魅力だ。大先輩の柳田のように、スケール大きな選手へと成長して欲しい。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)