プロ初安打に課題も露呈したデビュー戦 首脳陣はなぜ生海を慣れない右翼で使ったか?

ソフトバンク・柳田悠岐(左)と生海【写真:福谷佑介】
ソフトバンク・柳田悠岐(左)と生海【写真:福谷佑介】

打線の起爆剤として「7番・右翼」で抜擢もトンネル抜け出せず10連敗に

 ソフトバンクがトンネルを抜け出せずに10連敗を喫した。リーグ戦再開初戦となった敵地・ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦。先発の大関友久投手が6回途中までに5失点。打線も先発の西野らロッテ投手陣の前に2点止まり。9試合連続で2得点以下とこの日も得点力不足は解消せず、藤本博史監督は「1死満塁、無死満塁で1点しか得点できなかったというところがね」と嘆いた。

 大関は初回、先頭の藤岡を右前打で出塁させ、1死一、三塁からポランコの二ゴロ併殺崩れの間に先制点を奪われた。3回には味方の失策も絡んで2死二、三塁とされ、ポランコに2点適時打。6回にも2点を奪われてリードを広げられた。打線は4回無死満塁、5回1死満塁と中盤に立て続けにチャンスを作ったが、牧原大成内野手の犠飛で1点を返すのみ。併殺によって反撃の機会を逃した。

 9連敗中で迎えたこの日の試合。藤本監督ら首脳陣は思い切った策に打って出た。プロ初昇格となったドラ3・生海外野手を「7番・右翼」で即スタメン起用。2軍で守備についた37試合全て左翼での出場で、東北福祉大時代に守っていたという右翼は3軍戦で1試合守っただけ。それでも打力を買って、慣れない右翼での起用に踏み切った。

 小久保裕紀2軍監督も「レフトしか守れない」と語っていた中で、右翼で起用した意図を森浩之ヘッドコーチは「近ちゃんも慣れたところの方がいいと思うし、いろいろな兼ね合いもある。近ちゃんを動かすわけにはいけない。外野ってそんなに変わらないし、そんなに難しいことじゃない」と説明する。左翼の近藤健介外野手を動かす、柳田悠岐外野手を右翼にするよりも、守備面には目を瞑って右翼で起用することにした。

 もともと2軍でも守備面、走塁面での課題を露呈していた生海。この日も初回先頭の藤岡の打球にチャージをかけられず、右前安打にし、3回には慣れないZOZOマリンスタジアムでファウルフライを見失う場面もあった。持ち味である打撃面では、5回先頭で記念すべきプロ初安打となる右前安打を放った。ただ、1死一、二塁で中村晃外野手が放った左前安打では打球判断が遅れて本塁に生還できなかった。良くも悪くも、特徴が出たデビュー戦だった。

 2軍の首脳陣から生海の特徴について報告を受けていた1軍の首脳陣にとって、これはある程度は織り込み済だったはず。森ヘッドも試合後こう語った。

「(ライトを)守らせたこっちが悪いんで、これからできるようになってくれればいい。(今後も)使いたいという気持ちになる。総合的に考えると、打つだけじゃない課題もある。守備、走塁はまだこれから勉強していかないといけないところだけど、打つことに関しては楽しみなところを見せてくれた」

「(中村)晃のところで帰ってくるような走塁ができないと、1軍ではまだまだしんどいところは出てくる。初めてで緊張していたのかも分からんけど、2軍でやってきたことを1軍でやれないといけない。しっかり目指してやってもらいたいと思うけど、初めてにしてはよくやってくれたと思う」

 課題は見つかったものの、それ以上の期待感を抱かせてもくれた生海。1試合を通じて、右翼を守り「守備が緊張しました。(ライトと言われて)『大丈夫かな』って思いました、正直」と振り返っていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)