どれだけチームが苦しくても、全力で走る姿に光を見た。ソフトバンクは17日、オリックス戦(PayPayドーム)に0-3で敗戦した。球団史上初となる3カード連続の“3タテ”を食らっての9連敗。43勝37敗2分けで、前半戦を終了した。抜け出せずにいる長いトンネルの中で、選手はどんな思いで戦っているのか。牧原大成内野手の姿から伝えたい。
この日の相手先発は、すでに7勝を挙げ、選手間投票で球宴に選出された山下舜平大投手。結果的に7回2安打、無得点に封じられた。藤本博史監督も「相手の山下くんも最高のピッチングをしていた」と脱帽するしかない。牧原大は4打数無安打で、9回2死一塁では遊ゴロに倒れて最後の打者となった。
牧原大はここまで60試合に出場して打率.284。4月下旬に「左大腿二頭筋損傷」で1か月の離脱があったものの、二塁と中堅を守る守備力と、積極性のある打撃で貢献してきた。前半戦を終えるタイミングでチームは9連敗、自身も7月の打率が.211。ただ思うようにいかなくても、どんな状況だとしても、あきらめていない。そんな姿勢を感じたシーンがあった。
16日のオリックス戦、2回の攻撃だった。先頭の栗原陵矢外野手が内野安打で出塁。牧原大は初球からスッとバットを寝かせると、しっかりボールの勢いを殺して犠打とした。処理したのは若月健矢捕手。セーフティー気味だったのもあるが、牧原大は一塁まで全力で駆け抜けていた。「当たり前のことを当たり前にやっているだけです。自分も生きようと思ってやった結果です」と冷静に振り返る。
細かいシーンではあったものの、気持ちが前を向いていなければ、できないプレーだろう。自分の不振やチームの連敗で、後ろ向きになんてなっていない何よりの証だった。見守った長谷川勇也打撃コーチも「必死にもがこうというのを、あきらめているなら考えないといけないけど。そういう姿勢があり続けるのであれば信頼して送り出せる」と言う。「どういう状況でも、やるべきことをうちの選手はできる」という“ホークスの野球”が見えた瞬間だった。
4月に左足を痛めたのも、全力プレーが引き金だった。4月27日の楽天戦(PayPayドーム)で一塁を駆け抜けた時だ。「違和感のない状態で怪我をした」という突発的な出来事で、ハッスルプレーは“諸刃の剣”だ。それでも「怪我をしたからといって、手を抜いたりはしません。全力プレーがなくなったら自分じゃない」と言い切っていた。どんな状況だろうと自分のプレーを貫こうとする牧原大だから、首脳陣からもファンからも信頼される。
牧原大といえば、守備での姿勢からも“投手を助けたい”という思いが真っ直ぐに伝わってくる。16日の先発は東浜巨投手で8回1失点。この日はカーター・スチュワート・ジュニア投手で、3回無死から杉本が放った中堅への大きな飛球を、最後はフェンスにぶつかりながらも好捕した。結果的に7回3失点で2敗目となったが、周東佑京内野手の右翼守備など、投手陣もバックから勇気をもらったはずだ。
シーズン序盤に牧原大は守備での意識に「アウトをアウトにするのは当たり前なんですけど、ヒットをいかにアウトにしてあげるか」と話していた。連敗中の今も「いつも以上(に投手を助けたいと思う)というよりも、いつも通りにやっているだけ。毎試合『これだから変えよう』っていう気持ちはないですし。勝っていても負けていても投手を助けるのは僕たちの仕事なので」と言い切る。どんな時も自分のプレーを貫く姿は、まさにプロだった。
9連敗のまま、4日間試合のない“オールスターブレーク”に入ってしまった。泣いても笑っても、あと61試合だ。「負けているから何かを緩めたりしたら、それこそ終わりだと思うので。また頑張らないといけないですね」。全力プレーをするのは、毎試合同じ。野球なのだから、勝利か敗北、結果は出てしまう。それでも確かに言えるのは、選手は一生懸命に戦っているということだ。