単純な比較はできないが、柳田悠岐外野手よりも「上」だと言い切った。ソフトバンクの笹川吉康外野手はウエスタン・リーグで50試合に出場し、打率.208、2本塁打12打点でシーズンを折り返そうとしている。3年目の大砲候補の姿勢と結果を高く評価しているのが、小久保裕紀2軍監督だ。
笹川は横浜商で高校通算40本塁打を記録。2020年にドラフト2位指名でホークスに入団した。194センチの恵まれた身長に、左打ちから繰り出される豪快なフルスイング。背番号も、柳田がプロ入り時に着用していた44番であることから“ギータ2世”とも呼ばれてきた。3年目の今季は春季キャンプ中で連日、アーリーワークにも参加。確実に変化が見られる意識と、前のめりな姿勢は首脳陣も高く評価している。
「伸びる要素と、最低限兼ね備えていないといけない要素は備わってきている。アップでも一番最後まで走る姿がありますし、気分のムラが少なくなってきた。結構大事なことですよね」
こう語るのが小久保2軍監督だ。時には3軍の試合にも出場する。今季新設された4軍の影響で選手が増え、期待のホープでも時に3軍に“降格”させなければならない状況もある。「外野手が多すぎるので。誰を削るってなった時に、成績を残していなかったら下に行かざるを得ないので」。2軍でさえ激しい競争があるホークス。笹川もその中で揉まれて、まずは2軍定着を目指しているところだ。
柳田は広島経済大からのプロ入りで、笹川は現在、大学3年生にあたる年齢だ。単純な比較はできなくとも、柳田をプロ入り時から知る指揮官は「柳田の3年生の時よりは、吉康の方が上だとは思いますよ」とキッパリ。伸び代しかない21歳。かけてもらった言葉を現実に変えていくのは、まだまだこれからだ。
柳田は大卒4年目の2014年に初めて規定打席に到達して、打率.317を記録。5年目に球団史上初のトリプルスリー(打率.363、34本塁打、32盗塁)を達成した。「あいつがレギュラーを取ったのって27歳とかでしょ? 5年目にトリプルスリーで、(笹川は)あと5年か。可能性はありますよね」と期待する。それだけ期待させるポテンシャルと姿勢が、今の笹川にはあるのだ。
ファームでは7月中旬から最新鋭の打撃マシン「iPitch」を導入した。回転数や回転軸まで設定することができ、球種を“ミックス”させることもできる。小久保2軍監督も「この間は山本由伸に設定してやりました」というほどのマシンだ。タイミングを取るのに苦労する選手が多い中、真っ先に効果が表れているのが笹川だ。小久保2軍監督が明かす。
「(笹川)吉康とかは、この練習を始めてから確実に空振りが減ってきている。彼に関してはこれを使ったドリルを我々が強制的にやらせるようにしているので。今、全体練習では(他の選手には)強制的にはやらせていなくて。強制的っていうのは吉康だけ。試合での変化は、我々は感じています。本人がどう感じているかは別にして」
今季、ウエスタン・リーグでは120打数を経験して42三振。少し大味な打撃ではあるものん、いきなり改善が確認されている。「iPitch」の効果もさることながら、笹川の前のめりな姿勢があるからこそだ。「何か選手の成長につながったらいいなというところで、球団ぐるみでやっているところ」。秘めた才能を開花させるために、周囲の力強いサポートもある。あとは本人の努力だけだ。