「だからこの数年…」の苦言から2か月 斉藤和巳コーチが武田翔太に感じる気持ちの変化

ソフトバンク・武田翔太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・武田翔太【写真:荒川祐史】

中継ぎとして7試合連続で無失点「今が一番目の色を変えてやっている」

 確かな変化を、首脳陣も感じ取っている。ソフトバンクは27日、PayPayドームで投手練習を行った。取材に応じた斉藤和巳投手コーチは、武田翔太投手について「ずっと近くで見てきているわけじゃない」とした上で「今が一番目の色を変えてやっているかなと個人的には感じています」と姿勢の面での変化を表現した。

 武田は4月22日のロッテ戦(ZOZOマリン)で今季初先発も、黒星を喫する。5月3日のオリックス戦(PayPayドーム)では2回11安打6失点と試合を壊してしまい、斉藤和コーチからマウンド上での心構えを指摘され「だからこの数年こんな感じなんやろ」とまで言わせてしまった。武田自身も「受け止めるしかない」と、かけてもらった厳しい言葉を胸にファームで1軍を目指してきた。

 6月7日にリリーフとして再昇格すると、7試合で計9回1/3を投げて無失点。25日のオリックス戦(PayPayドーム)では先発の板東湧梧投手が4回を終えて3失点。5回1死一、二塁から武田が登板すると、無失点で切り抜けてみせた。中盤の厳しい場面を託されるなど、首脳陣からの信頼も少しずつ起用に表れている。「だからこの数年こんな感じなんやろ」という苦言から約2か月。今の武田の姿は、斉藤和コーチの目にはどう映っているのか。

「今が一番目の色を変えてやっているかなと個人的には感じています。あとは中で結果も残っているので、そういう意味での充実感っていうのは彼の中で少しずつ感じてくれているんじゃないかなと思います。そこらへんの波がある選手。それがちゃんとできていたら、気持ちの波をなくしたら、力はあるんやから。成績の波も小さくなる。気持ちと技術はつながっているから」

「ただ持っている能力からすると、先発でっていうところも。それは彼とも話をして。お互いに頭の片隅には残しておこうと約束はしているので。ただ今シーズン、この形で行くかもしれないということも話しているので。とりあえず、今自分ができることを全て、ベストというか。あいつに関しては全てのことに関して全力で取り組もうと話はしています」

 武田の内面をしっかりと理解してか、「全てに全力」という言葉を使って気を抜かないように、抜かせないように努めている。今の役割で1軍に居場所を築き上げないといけないからだ。武田は6月の昇格以降、斉藤和コーチから「お前はやればできるんやから」と声をかけられたことを明かしていた。斉藤和コーチは、そう思っているのは自分だけではないと強調する。

「今まで散々、いろんな人に言われてきていると思う。初めて言われたことじゃないと思うし、言い方であったり。“腫れ物”に触るくらいの感じで話をされていた人もいると思うし。俺は“腫れ物”とか関係ないから。人に何かを話すってことはそれなりに自信を持って話すし、その人のためにと思って向き合って話そうと思っているから。それで嫌われたら嫌われたで、仕方ないと思っている」

「それくらいの気持ちで一度、武田には話をしたってだけで。みんな何十人、何百人ってくらいの人が、散々話はしてくれたと思っています。(やればできると思っているのは)俺だけじゃないと思います」

 言葉に詰まっているのは、期待だけ。斉藤和コーチは5月3日のオリックス戦後に「言うってことは俺も責任を持って言っているし、自分の中で自信じゃなくて確信があると思っている」とも話していた。先発に戻る少しの可能性を残しつつ、今は目の前の投球に全力で集中するだけ。こんなにも真っ直ぐに向き合ってくれる指導者との出会いを、武田は力に変えなければならない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)