さまざまな可能性を探りながら、首脳陣は日々のスタメンを考えている。ソフトバンクは25日、オリックス戦(PayPayドーム)に2-4で敗れた。「7番・二塁」で9試合ぶりにスタメン起用された野村勇内野手は2打数無安打。6月11日の巨人戦(同)以来の先発だったが、快音を響かせることはできなかった。高い身体能力を持つ野村勇ではあるが、なぜ1軍昇格後のスタメン起用が3試合にとどまっているのだろうか。
2回2死三塁のチャンスでは、相手先発の山崎福に変化球で攻められた。3度、チェンジアップに空振りして三振。5回2死には一塁側にプッシュバントを試みるなど工夫を凝らしつつ、死球で出塁した。8回先頭では初球から打ちにいくも平凡な遊ゴロ。9回2死一、二塁では、右腕の平野佳に対して代打・川瀬を送られ、4打席目に立つことはなかった。
試合前の時点で打率は.333(9打数3安打)。17日の阪神戦(甲子園)では代打で1号2ランを放ったが、6月6日に1軍に昇格して以降、スタメンはわずか3試合にとどまっている。相手先発が左投手の時でも外れることがある。現在の状態を首脳陣はどう捉え、出場機会を見極めているのか。24日のオリックス戦後に森浩之ヘッドコーチに聞いた。
「しっかりとバッティングをやってもらわんと。いくところはうかがっているけど、なかなかいく機会はないよ、今のところ」
首脳陣は相手投手との相性はもちろん、試合前の打撃練習なども参考に状態を見極めている。その上でまだスタメンで使う状態にはない、と森ヘッドは言う。3月に手術を受けた腰に関しては「問題ない」と言うが「ただ実戦不足というところはあると思う」。首脳陣は交流戦明けにウエスタン・リーグの広島戦(由宇)に出場させ、感覚を取り戻させようともしている。
打撃コーチの目からはどうだろうか。吉本亮打撃コーチは野村勇の状態に「ダメっていうことはないですけど、各選手、頑張っている。三森の状態も上がってきているので」と言う。他の選手との兼ね合いというものは毎試合、存在する。24日のオリックス戦なら、三森の働きに期待して先発を託すことになった。その上で「結局、ポジションの数は決まっているから」とも話した。
柳田悠岐外野手をはじめ、栗原陵矢外野手や甲斐拓也捕手ら、スタメンに固定されている選手もいる。一方で“準レギュラー”の選手は少ないチャンスで結果を残し、自分で扉をこじ開けていくしかない。吉本コーチも「きっかけというか、入り口を作っていくのが若い選手が第一にやることだと思う」と続ける。プロ野球選手である以上、出番は結果と練習の内容を首脳陣に見せることでつかむしかない。
長谷川勇也打撃コーチは、同じく野村勇の打撃面には「悪くないでしょう。勝負できると思います。去年のスイングよりはちょっと、無駄もなくなっているので、全然いけるとは思います」とうなずく。腰の状態についても「ここに来ているということはもう……。そんな、リハビリの選手を1軍に上げるわけじゃないから」と、心配はないと強調した。
その上で、長谷川コーチも吉本コーチの考えに同調する。野村勇をはじめ、上林誠知外野手や周東佑京内野手らを含め、まだまだチーム内での競争は続いている。
「絶対的な“コレ”っていうものを固めてもらえたらいいけど、まだそういう段階じゃない。対戦する投手や、その時の状態だったり『今の投手だったらこの投手のこの球が合いそうだな』とか『今日はこういうバッティングをしてほしいから、この選手はどうかな』とか。そういう出番でどんどん仕事場を増やしていって、足場を固めていく選手が出てくればいいと思います」
ルーキーイヤーの昨季に10本塁打、10盗塁を記録するなど、期待されていることは間違いない。競争に勝って、レギュラーになる。どんな選手だろうと、例外なく通ってきた道だ。