2軍で試された「センター野村勇」の意味 リーグ戦再開後の起用の可能性は?

ソフトバンク・野村勇【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・野村勇【写真:藤浦一都】

森ヘッド「右バッターにどうしても試合に出てもらいたいというのは、藤本監督も思っている」

 将来に向けた密かな取り組みが行われた。20日に山口・由宇球場で行われたウエスタン・リーグの広島戦。この試合には1軍で出場機会の少ない野村勇内野手、野村大樹内野手、三森大貴内野手も参加し、試合途中からは野村勇が中堅手の守備に就いた。

 この日、野村勇は「1番・二塁」で、三森が「2番・三塁」でスタメン出場した。5回の守備で守備位置が変更となり、三塁に井上朋也内野手、二塁に三森が回り、野村勇がこれまで公式戦で一度も守ったことのないセンターに入ったのだった。

 内野手が本職の野村勇だが、社会人時代には外野手としてもプレーしており、ルーキーイヤーの昨季は左翼で1試合に出場している。野村勇の中堅起用は今後に向けたオプションになり得るのか。その狙いを森浩之ヘッドコーチが明らかにした。

「これから先を考えたときに、ポジションのところをシミュレーションすると、ある程度は決まってくる。今、可能性があるところと、セカンドとセンターかなっていうところで。もともと社会人の時に外野もしていたんで、できないよりはできた方が彼のこれからの試合出場にもチャンスが出てくるのかなと思うところで、2軍なら思い切ってできるので」

 現状で1軍の定位置はほとんどが固まっている。一塁の中村晃、二塁の牧原大成、三塁の栗原陵矢、遊撃の今宮健太、左翼の近藤健介、そして右翼(またはDH)の柳田悠岐は不動のメンバーだ。現状、出場機会を得られるポジションといえば、中堅、柳田がDHに回った際の右翼、そして、牧原大を中堅で起用した際に空く二塁ということになる。野村勇の起用の幅を広げるための“オプションテスト”なのだという。

 チームの“右打者”事情も影響する。現状のスターティングラインナップを見ると、右打者は今宮と捕手の甲斐拓也の2人だけ。レギュラー候補として期待された正木智也外野手が不振のためにファームで再調整中、リチャード内野手やウイリアンス・アストゥディーヨ内野手、コートニー・ホーキンス外野手も鳴かず飛ばずの状況で、左打者がズラリと並ぶ。

「右バッターにどうしても試合に出てもらいたいというのは、藤本監督も思っている。この先も踏まえて、彼(野村勇)が阪神戦のホームランみたいなものを見せてくれると使いたいという気持ちがどんどん湧いてくる」。野村勇は17日に行われた阪神戦で3点を追う7回に代打で2ランを放ち、逆転勝利の足がかりを作った。昨季ルーキーながら10本塁打を放った長打力はやはり捨て難い。

 リーグ戦再開後すぐ野村勇を中堅で起用する可能性について、森ヘッドは「それはない」と断言する。「練習というか、小久保監督にも適性を見てもらう。センターをできるようなってくれば、出場が多くなる可能性がある。そこに向けてのこちらの準備です」。未来に向けた“オプション”。野村勇がセンターを守る時は来るだろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)