劇的な逆転勝ちの裏で… 4回途中KOの石川柊太、著しく悪化している“ある数字”

ソフトバンク・石川柊太【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・石川柊太【写真:荒川祐史】

5月19日の西武戦を境にして右腕に起こっている“異変”

 ソフトバンクの石川柊太投手が17日、敵地・甲子園球場での阪神戦に先発し、4回途中4失点でKOされた。2試合連続で4回途中でのノックアウト。チームは劇的な逆転勝ちを収めたものの、右腕自身は5月19日の西武戦で今季3勝目を手にして以降、4試合連続で白星から遠ざかっている。

 序盤はまずまずの内容に見えた。初回を3者凡退の立ち上がり。2回に坂本のセーフティスクイズで先制点を奪われたものの、3回には2つの三振を奪った。急変したのは4回だった。先頭の大山に左翼線への二塁打を許すと、佐藤輝には1球もストライクが入らず、ストレートの四球を与えた。

 その後1死一、三塁で坂本には左翼線への適時二塁打を許して追加点を奪われると、2死満塁で近本には右前へ2点適時打を浴びた。この回一挙3失点。ベンチは堪らず投手交代を決断し、石川は2試合連続の4回途中KO。チームの逆転勝ちで自身3連敗は免れたものの、苦しい投球内容だった。

 3勝目を挙げた5月19日の西武戦では7回無失点、無四死球と上々の投球内容を見せ、その先の復調を予感させる内容を見せた。だが、5月27日のロッテ戦(PayPay)では4安打7四死球3失点で4回KO。6月3日の広島戦(マツダ)こそ6回7安打2失点と役割を果たしたが、同10日の巨人戦では4回途中7安打6失点。そして阪神戦と、不安定な投球が続いている。 

 ローテの柱として期待されていた石川の投球に、一体どんな変化が起こっているのか。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータを参照すると、3勝目をマークした5月19日の西武戦を境に、著しく悪化している要素が見えてくる。

 石川といえば、真っ直ぐ、カットボール、パワーカーブ、そしてスプリットが主な持ち球になっている。球種ごとの得点増減を表すピッチバリューと呼ばれる指標の中で、スプリットの「wSF」が急激に落ち込んでいるのだ。

 昨季、石川の「wSF」は-4.7。2020年は8.7とかなり有効なボールだったが、翌2021年には-2.2とマイナスに転じ、2022年は-4.7に。そして今季はここまで-9.4と下落の一途を辿っている。5月19日の段階では-2.9にとどまっており、まだ効果を発揮していたが、そこから急激に数値が悪化。10日の巨人戦には-9.4まで下落してしまった。

 この「wSF」が下降線を描き始めると、真っ直ぐの得点増減を示す「wFA」も下向き始めている。5月27日のロッテ戦時点では4.6と、有効なボールだったが、試合を追うごとに右肩下がりとなり、この日の阪神戦を終えた段階で1.3まで下落。実際、この日、石川と甲斐のバッテリーがスプリットを投じたのは3回に中野に投じた1球だけ。スプリットが有効なボールになっておらず、石川の投球を苦しくしていると見える。

 また、ボールが高めに集まりがちな傾向も見えている。5月19日の西武戦までストライクゾーン、ボールゾーン合わせて高めに投じられたボールは全投球の24.6%だったが、その後の4試合では37.6%まで上昇している。特に高めのボールゾーンに外れるボールは同西武戦までの10.7%に対し、その後の4試合は21%に。ここにも石川の投球を苦しくしている原因が見て取れる。

 プロ野球の世界ではどれだけいい真っ直ぐを持っていようとも、有効な変化球がなければ、真っ直ぐも生きない。逆もまた然りで、どれだけ優れた変化球を持っていようとも、いい真っ直ぐがなければ、それも生きてこない。高い次元でのコンビネーション、バランスが必要。石川は本来の姿を取り戻すことができるだろうか。

(鷹フル編集部)