【連載・甲斐拓也】「選手だって同じ人間なんです」心ない批判や中傷に思うこと

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

「選手がすべて我慢しないといけないのか、と言うと、それは違うと思う」

 鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、甲斐拓也選手の「6月後編」です。6月のテーマは「ファンの存在」。後編では昨今、より注目を集める選手への誹謗中傷を甲斐選手はどう受け止めているのか。その思いを激白した。甲斐選手の月イチ連載、次回は7月3日(月)より掲載予定です。

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 5月30日に本拠地PayPayドームで行われた中日戦で、甲斐は今季2号本塁打を含む3本の長打を放ち、勝利に貢献した。同期の牧原大成内野手とお立ち台に上がり、黄色く染まるスタンドを見つめた。「こんなにたくさん応援してくれてる人がいるんだ」。改めてファンの声援の後押しがあることを噛み締めていた。

 温かい声援を送ってくれる多くのファンがいる一方で、心ない言葉を発する人も少なからずいる。最近、球界内でも誹謗中傷に対して、声を上げる選手も出てきている。勝敗に直結するキャッチャーというポジションには、批判の矛先が向きやすい。甲斐自身もSNSを中心に上がる批判の言葉に、胸を痛めてきた1人でもある。

「当然、応援してくれているというのはあると思います。でも、その中には、当人たちはそんなつもりじゃなくとも、僕たち選手が傷つくことはある。応援してくれているからこそ、そういうことを言ってしまうというのも思います。僕らは言われる立場でもありますけど、ただ、それでいいのかって言ったら、僕はそうは思わない。間違ってもそういうことはして欲しくない。シンプルに応援して欲しいなっていうところはあります」

 甲斐自身、過去に本拠地に何通もの批判の手紙が届いたこともあった。そして、今でもそうした言葉はなくなっていない。「SNSとかは見ないようにしている」というが、それでも、ふとした時に目に入ってしまう。批判ならまだしも、度が過ぎたものもある。

「どうしても見られる仕事ですし、結果の世界で生きている。応援してくれている人たちからすると、(負けて)もどかしい気持ちがあるというのはわかります。どうしても言いたくなってしまうところもあるんだと思います。ただ、それらを僕ら選手がすべて我慢しないといけないのかと言うと、それはやっぱり違うと思うんです」

「選手だって同じ人間なんです。無責任な言葉が選手のもとに届いたりもしますし、なんでもない言葉に傷つくこともあります。それをすべて受け入れましょう、受け止めましょう、というのは違うと思います。それはプロ野球の世界に限ったことじゃないと思います」

 ファンによって支えられているプロ野球という世界で生きる以上、少なからずあれこれ言われることは理解している。チームが負ければ、ファンがもどかしい思いを抱くのも分かる。かといって、向けられた刃をすべて受け止めなければいけないかと言えば、それは違う。選手も人間であるということをすべての人に理解しておいてもらいたい。

 温かい声援には大きな感謝を抱く。「グラウンドを1周したとき、温かい声援が嬉しかったです。応援してくれている人はたくさんいると思う。特にホークスはファンの方々がとても熱いですし、九州の球団として誇りに思ってくれていると思う。そういったチームである以上、勝たないといけないなというふうに思います」。ファンの思いに応えたい。その思いで日々、必死になって戦っている。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)