自分にプレッシャーをかける意味でも、強い言葉を放っている。27日のロッテ戦(PayPayドーム)で1軍に復帰したソフトバンクの牧原大成内野手。左太もも裏の肉離れを乗り越えて、いきなり1号2ランを放つなど勝利に貢献し「ホッとはしましたけど、その後はコンタクトが悪かったので。課題はあるかなと思います」と冷静に振り返っていた。
今季はここまで21試合に出場して打率.300、1本塁打、7打点。昨季は規定打席まで残り2打席と、限りなくレギュラーに近づき、その存在感は今季も増すばかりだ。4月27日の楽天戦(PayPayドーム)で左足を痛めて登録抹消に。1か月という短期間での復帰も、自分のやり方に自信と誇りを持っていたからだ。
「全部が全部、言われた通りにやっていてもダメだったので、無視することもありました。これは自分で必要と感じるものと、必要じゃないと感じるものには『それはやりません』って伝えていました。できるだけ最短で(戻ってこられるように)。本当に、そのまま言われた通りにやっていても、もうちょっと長い時間がかかっていた。そこは自分の経験で」
牧原大といえば、自分の心境を偽ることなく、ストレートに言葉にする姿が印象深い。春季キャンプ中には外野を争っていた上林誠知外野手に「皆さんは上林の方が印象にあると思うんですけど、最近では僕の方が活躍していると自分でも思っている」とキッパリ。4月9日の西武戦(平和リース)では死球を受けた後、代打を出されて交代。本博史監督の采配だろうと関係なく「正直、イラッとした」と口にした。
今のプロ野球選手の中でも、ここまではっきりと自分の考えを言葉にする選手は少ないのではないか。どんな思いを持って、力強い言葉を使って表現をしているのか。牧原大なりに、チームを引っ張っていこうという意識がそこにはある。
「自分が負けず嫌いというか、こうすることによって、聞いた選手がどう思うのか分かりませんけど、それによって高め合っていけたらと思います。年齢的にも上の方なので。引っ張ってもらう立場ではない。実績、成績は関係なく、自分が引っ張っていけるような感じになっていけたら」
強烈すぎる競争意識の対象は、自主トレをともにした選手も例外ではない。牧原大がリハビリ組にいた時期、野村勇内野手が「坐骨神経痛」で復帰を目指す途中だった。同じくリハビリをともにした中で、野村勇は今月24日の3軍戦で実戦復帰を果たした。牧原大は「普通です。別に何も『頑張ってほしいな』って思ったくらい」。1人の野球選手として心から認めるからこそ、はっきりとライバルだと言い切った。
「自主トレを一緒にやっているからって、仲良しこよしで野球をやっているわけではない。彼が戻ってくれば、間違いなくライバルになる。あいつはあいつなりに頑張ってくれたら。それだけですね」
野村勇は昨季は10本塁打に10盗塁を記録するなど、97試合に出場した。二遊間に加えて三塁も守るだけに、1軍に帰ってくれば、自分のライバルになることは誰よりもわかっていた。育成の入団から、今季が13年目。自分の力でここまで居場所を築き上げてきたから、簡単に譲るつもりはない。
グラウンドに立てば、投手を助けるためにも誰よりも全力でプレーする。「勝負ごとなので。気持ちを出さないとかは、ない。常に、毎日毎日強い気持ちでやっている。それが年数を重ねるごとに積み重なっていると思います」。牧原大成の生き方に、プロ野球選手としてのプライドがにじみ出ている。