“先発=100球メド”への違和感 斉藤和巳コーチが藤本監督に掛け合った提言

ソフトバンク・斉藤和巳コーチ【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・斉藤和巳コーチ【写真:藤浦一都】

「『100球ってなに?』って思うけどね」

 ソフトバンクの投手陣に、変化が見て取れる。5月9日の日本ハム戦(熊本)で完封勝利を挙げた大関友久投手は、16日の楽天戦(盛岡)でも負け投手にはなったものの、8回完投。19日の西武戦では石川柊太投手、20日の同戦では東浜巨投手が8回途中までマウンドに上がるなど、先発投手が120球前後の球数を投げるようになっている。

 藤本博史監督は「石川、東浜、大関の3人は110球から120球っていうのを考えています。藤井はまだ今年から先発しているんで100球ぐらい、和田もそれぐらいという形で考えていますけど」と明かしている。ローテの柱を担うべき投手は120球前後をメドに投げさせたい考えを打ち出していた。

 3月31日にシーズンが開幕してから、先発投手は100球前後でマウンドを降りることが多かった。4月で球数が110球を超えたのは、4月4日のオリックス戦で(京セラドーム大阪)の石川だけ。100球を超えたのも5試合しかなかった。そうなれば、当然、負担がかかってくるのは中継ぎ陣。松本裕樹投手が31試合を終えるまでに16試合に登板し、コンディションを落として一時、登録抹消になった。

 この状況に危機感を覚えたのが斉藤和巳1軍投手コーチだった。「その先のことも考えてね。シーズン中盤、終盤になったら、今よりも継投継投という状況になってくる可能性もあるし、そこに向けて温存したいっていうのもある」。先発投手の球数を120球前後まで引っ張れるように、藤本監督にも掛け合った。

「監督にも理解をしてもらいながら、(イニングを)伸ばしていけるところは伸ばしていく」と斉藤和コーチは語る。特にカードの頭を担う大関と石川、そして2人と共にローテの軸を担う東浜の3人は球数のメドを120球に引き伸ばし、できるだけ長いイニングを投げるようにと、投手起用の方針を打ち出した。

 現役時代は“負けないエース”と称された斉藤和コーチだけに、現代の投手起用策には思うところがある。かつては先発が140球、150球投げることもザラにあったが、故障予防の観点やメジャーリーグの影響もあって100球前後をメドとする風潮がある。それだけに「近年の野球界は100球前後と勝手に決められているみたいな感じがする。それはいまだに理解はできない。なんの100球かっていう。それを先発投手が思っていたら大きな間違いだと個人的には思う」と語る。

「『100球ってなに?』って思うけどね。(先発投手が数多く投げたいと思うことが)普通になってほしいし、普通だと思っている」

“100球メド”とするメジャーリーグでは中4日や中5日で回るのが主流で、そこには大きな違いがある。そんな観点からも斉藤和コーチは「日本は中6日なんで。それだったら中5日でええんちゃうかって思う。その方が先発の質は上がるわけだから」。中6日であれば先発は最低6枚必要だが、中5日であれば5枚プラスアルファで回せる。中6日で100球前後では、やはり物足りないというのだ。

 まだ2023年シーズンは、交流戦さえ始まっていない序盤戦。もちろん目先の1勝も必要だが、肉体的、精神的にも疲労してくる中盤、終盤を見据えることも大事になってくる。先発とリリーフのバランスを取りながら、戦いを進めていく。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)