空く登板間隔に抱く“もどかしさ” 古川侑利が和田毅から授かった変化のヒント

ソフトバンク・古川侑利【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・古川侑利【写真:藤浦一都】

1軍で登板機会がなく、出場選手登録されたまま2軍戦で異例の調整登板

 異例の2軍での調整登板だった。19日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの広島戦で、1点リードの最終回にマウンドに上がったのは、1軍で出場選手登録されている古川侑利投手だった。同時刻に1軍はPayPayドームで西武戦を戦っている中、2軍のマウンドで1回を無安打無失点。「久々という緊張感もあったし、(2軍は)7連敗中と聞いていたので、一番いい場面で、いい緊張感の中で投げられた」と振り返っていた。

 現役ドラフトで日本ハムからソフトバンクに移籍し、新たなシーズンを迎えた右腕。開幕1軍を勝ち取ったものの、ここまでは5試合の登板にとどまっている。この日は1軍で最後に登板した5月3日以来、中15日でのマウンド。ブルペンの感覚もあまり良くはなかったと言うが、2つの三振を奪った。

 ホークスに来てすでに中15日、中16日という長い登板間隔を経験している。開幕から1軍にいながら、なかなか登板機会を得られず、もどかしい思いも当然ある。「名前が呼ばれない時は、空きすぎているなと思ったらブルペンで何球か投げてという感じでやっていました。遠投とか、結構距離を取って数を多めに投げたり。そんな調整はしていたけど、やっぱりゲームになったらどうしても違う」と難しさも感じた。

「ファイターズの時も中16日とか中18日とかはあったので。それを経験していたので大丈夫でしょう、という気持ちでいないと無理なので」。不安な気持ちもありながら、自らを奮い立たせ「毎日行くつもりでいた」と登板機会に備えていた。

 競争の激しい投手陣の中で「すごいピッチャーばかりじゃないですか」と学ぶことは多い。中でも、42歳の大ベテランである和田毅投手との会話に大きなヒントを得た。遠征先で食事を共にした際、古川は「最近、(体の)開きが早くて悩んでいる」と相談した。そこで和田から問われたのは、投球の始動時の考え方だった。

 古川は「始動は足から」と考えていたが、和田の口から出たのは全く違う考え方だった。「お腹から螺旋を作っていく」イメージで「始動はお腹から」。足を残すことによって膝が前に行かず、身体も突っ込みづらくなり、開きが抑えられるのだと説明された。経験豊富な左腕からの助言をもとに、ピッチングを見直した。

 新天地での日々は刺激的だ。登板機会を得るため、普段のキャッチボールや遠投でも良い球を投げ「いつでも行けます」と言わんばかりに腕を振る。「毎日行けるくらいの気持ちですよ」と静かに闘志をたぎらせる。異例の調整登板を経験した古川。投げたい気持ちが溢れかえっている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)