30試合目で「近藤、柳田、栗原」が初めて“解体”…首脳陣の意図と期待は
少しずつ、戦い方に変化が出てきた。5月11日に行われた日本ハム戦(PayPayドーム)で、今季30試合目にして初めて「近藤、柳田、栗原」の並びが解体された。3番に近藤健介外野手、4番に柳田悠岐外野手が入ると、5番に入ったのは中村晃外野手だった。栗原陵矢外野手は「6番・三塁」で出場して3打数1安打。“柳田の後ろ”を初めて外れた。
藤本博史監督は「柳田の状態がいいだけに、特に栗原にプレッシャーがかかってるというところがあるんで、それだったら、一つ間に誰かを入れて」と意図を語っていた。栗原は打率が2割5分を切ってしまうなど、常に試行錯誤をしている状況。周囲の心配をよそに「こんなものじゃないですか?」と言い切っていたのが長谷川勇也打撃コーチだ。
栗原は昨季、左膝の前十字靭帯を断裂するなどの大怪我を負った。1年間のリハビリを経て、3月31日のロッテとの開幕戦(PayPayドーム)では1号3ラン。劇的な復活を遂げてチームの開幕ダッシュに貢献したが、打撃は下降線をたどっていった。だから長谷川コーチは「あまり背負わせてもいけない。よくやっていると思います」とも言う。そもそも大怪我から復帰のシーズン。1年間を戦い抜くことが、絶対に達成しないといけない目標でもある。
「あまり求めすぎてもいけない。去年やっていないのもあるし、あまりハードルを上げてもね。開幕戦がよかっただけに、みんなのハードルが上がったところがあるんですけど、そこまで上げなくてもいい。膝を大怪我して、これだけ試合に出ていれば御の字かなと。その中で、グッと彼がスケールアップできるようなキッカケを今年のうちにつかんでもらえたら」
“時期”も打順変更を決めた要因の1つでもある。今はまだ残り100試合以上ある。1勝の重みが増していく終盤になれば「引っ張りすぎると変えようにも変えられなくなる」と長谷川コーチは言い「どこかで動かさないといけない時はある。(状態が)上がってくるタイミングはあると思う」と一時的な処置であることも強調する。打線を考える首脳陣にとっても、今の中軸の存在はそれだけ大きい。
「あの3人(近藤、柳田、栗原)がこけると、チームの雰囲気もうまく回らない。彼ら頼みではいけないんですけど、彼ら頼みなところが実際あって。かと言って、3人をずっとくっつけていると、試合が進んでいくと余計に動かしづらくなるというところで(今回は動かしました)」
長谷川コーチも現役時代は右足首を手術するなど、栗原と同じく大怪我を乗り越えてシーズンに飛び込んだ経験をしている。栗原のリハビリ時の姿勢も「しっかりと自分の体と向き合っていた。体の中にアンテナを張り巡らせて、微妙な変化を察知できるように」と評価していた。だからこそ、健康にグラウンドに立ち続けてもらうことが最優先。能力も高く、責任感も強い栗原なら、必ずプレーの中できっかけを見つけてくれる。
5月13日のオリックス戦(京セラドーム)では山本から2点適時打を放つなど、少しずつ復調の気配が漂っている。栗原がグラウンドに立っていることは、起用している長谷川コーチにとっても「僕らの自信にもなる」とうなずく。能力も取り組む姿勢も含めて、それだけの信頼が栗原にはある。
(竹村岳 / Gaku Takemura)