鷹フルがお届けする月イチ連載、周東佑京内野手の「5月中編」です。今回のテーマは周東の代名詞でもある「盗塁」について。他球団で注目する“ライバル選手”について明かしてくれました。新しいパ・リーグのスピードスターや、WBCで得た技術など、盗塁に関する秘話がたくさん詰め込まれています。周東の連載「5月後編」は13日公開予定です。
新たなスピードスターに周東も注目していた。10日を終えた時点で、盗塁ランキングのトップは日本ハムの五十幡。10盗塁を決めているものの、左ハムストリングス肉離れで離脱を余儀なくされた新星について、周東は「知っていますよ。(面識は)チラッと話したことしかないですけど、すごいなと思って見ています」と印象を語る。
中堅を守っていれば、相手選手の二盗は自然と視界に入ってくる。五十幡の技術はもちろんだが「足がめっちゃ速いですね、シンプルに」と周東ですら驚くスピードだ。中堅から眺めていても「(視界に)入ってきますし、見ていますよ。だいたいセーフだろうなと思って見ています」という。他球団でも俊足の選手なら、自然と注目してしまう。
周東は球界屈指の俊足で、3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも侍ジャパンの世界一に貢献した。準決勝のメキシコ戦では代走での出場からサヨナラのホームを踏み、自分の存在感を一気に世間に印象付けてみせた。そんな周東が思う、盗塁の技術において他球団で目を引く選手は誰か。即答したのは、ずっと憧れている先輩の名前だった。
「(西川)遥輝さんですね。すごいな、うまいなと思います。(僕が)出始めの時からずっと思っています」
挙げたのは楽天の西川だ。通算331盗塁、4度の盗塁王を経験したスピードスター。秀でているポイントを「スタートの技術ですね。いくべきところはいくし、いかないでいいところはいかないですし」と解説する。強調したのは的確な状況判断。試合の展開やイニング、相手投手のクイックなどで、スタートするかしないかが伝わってくるという。
西川との交流は2019年から始まった。周東は同年3月に支配下登録されたばかりで、1軍の全てが初体験だった。勇気を持って西川のもとに足を運び、声をかけた。「序盤に打てなくて、その時、遥輝さんはずっと1番で出ていた。僕も1番を打っていた中で『どうしたらいいですか』『バッティングこうなんですけど』みたいな」というキッカケで仲を深めるようになった。
2020年には50盗塁でタイトルを獲得した。同年は西川も42盗塁でパ・リーグ2位だっただけに、デッドヒート中はその存在が「気になっていましたね」という。「あの年は(盗塁王を)獲れるなら、この年しかチャンスがないと思っていたので。チームも勝ちが続いていたので、いき(走り)やすかったのはありますね」。チームが日本一に輝くほど波に乗っていたことも自身のタイトルにつながり、西川という大きな先輩の存在が自分を成長させてくれた。
3月のWBCではヤクルトの山田、西武の源田、阪神の中野ら盗塁王の経験がある選手とチームメートになった。盗塁においても技術を“盗んできた”といい、印象に残ったのは山田だという。米国との決勝戦でも盗塁を決めた山田を「哲人さん」と呼び、技術的な部分には「クイックが遅いのか速いのか(を頭に入れていて)スタートがうまいなと思いました。スタートを切れる反応がすごかった」と続けた。
山田の通算での盗塁成功率.855。連続盗塁成功記録「38」は今も輝く記録だ。成功すればチャンスが広がる反面、常に盗塁には失敗のリスクがあり、失敗すれば攻撃のリズムを止めてしまう。盗塁の数と、成功率のバランスを周東はどうとらえているのか。
「あんまり失敗のことを考えないです。あまりにもスタートが悪かったらあれですけど、いいスタートを切ってキャッチャーがいいところに投げてアウトだったら、キャッチャーがうまかったと思うようにしています」
とにかく大切なのは、スタートを切る勇気だ。数々のスピードスターから技術を“盗んで”、周東はどんどんたくましくなっている。