驚きの豪快弾がバックスクリーンに突き刺さった。しかも1打席のみならず、2打席連続で、だ。6日に敵地ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦。チームを逆転勝利に導いたのはキャプテンで主砲、柳田悠岐外野手のバットだった。
劣勢をひっくり返した。2点を追う6回、ロッテ先発のメルセデスのボールを捉え、バックスクリーン右へ。1点差に詰め寄る一撃を放つと、両チーム1点ずつを取り合って迎えた8回には逆転2ラン。ロッテ4番手・澤村の真っ直ぐを捉え、再びバックスクリーンへと運んだ。
文句なしのヒーローだったが、ヒーローインタビューに登場したのは8回を投げ切った東浜巨投手だった。当初は柳田の予定が、直前で柳田が東浜に譲った。「巨が頑張ったんで。あんな117球も投げて。僕は(DHだったから)裏でバット振っていただけなんで」とあっけらかんと語るのも“ギータ”らしかった。
この日、上空は中堅からバックネット方向に向けて20メートル前後の強風が吹き荒れていた。フラフラと舞い上がったフライが内野スタンドまで風で流されるシーンが何度もある、強烈な逆風だった。ただ、柳田の打球は違った。追い風に乗って飛距離を伸ばしていった。現に柳田は1本目の本塁打を「風の後押しもあり」と振り返っていた。
風が名物とも言えるZOZOマリン。上空で吹く強烈な逆風は本塁方向のスタンドにぶつかると、跳ね返ってグラウンド付近では追い風になると言われる。高々と舞い上がった打球は強い逆風の餌食となるが、この日の柳田の打球のように低い弾道で中堅方向に弾き返した打球は、風の後押しを受けて伸びていくという。
この2発に驚きを隠せなかったのが長谷川勇也1軍打撃コーチだ。試合後に「凄いっすね」と素直に口にすると「あの高さでセンター方向はバックスクリーンもあるし、風の影響も受けづらいんですけど、それにしてもまだあんな打球を打てるっていうのは凄いですね」と続けた。
そんな長谷川コーチは今年35歳となる柳田の“成長”を感じている。「今シーズンなかなか調子が上がらなくても、諦めずにずっと打席内で集中してやってくれていた。その癖がついてるというか、ずっと集中力を維持できている」。もともと集中力にはムラのあるタイプだった。点差が開くと集中力を欠くプレーを見せることもあった。
長谷川コーチ曰く、今季は「そういうところも見られなくなってきた。ずっと開幕から一貫して同じテンション、同じモチベーションで入っている」と変化が見て取れるという。若手たちの良き見本にもなるようで「そこは凄いなと思いますし、そう言ったところを若い人も見てもらえればと思います」と目を細めていた。
キャプテンとして3年ぶりのリーグ優勝へチームを牽引する柳田。シーズン序盤は苦しんだものの、4月後半から状態は右肩上がりだ。決してチーム状態は良くない中で、主砲のバットが頼もしい。