決して、大袈裟な表現ではなかった。ソフトバンク2軍は20日、ウエスタン・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)に0-3で敗戦した。先発した森唯斗投手は7回3失点と力投したが、黒星がついた。小久保裕紀2軍監督は森に「自責0ですけど。申し訳ないですね。あんなね、あんなプレーで負けをつけさせたことが非常に申し訳ない」と頭を下げた。
唯一の失点シーンとなったのは3回だった。2死一塁から福田の打球は左中間へ。これに左翼・生海外野手と中堅・緒方理貢内野手が交錯するようにして落球した。2死二、三塁とピンチが広がると、続く山足に左越えの3ランを被弾。森は「謝られましたけど、僕がしっかり抑えないといけなかった。自分の責任です」と野手をかばったが、はっきりと断罪したのは小久保2軍監督だ。
「森さんがあれだけ、朝の7時くらいからきて、ずっと自分でアーリーワークをして、1週間に1回の登板を絶対にミスれない、絶対に結果を出さないといけないという取り組みをしている。僕も朝に会うんですけど。毎日ウエート場で見ていて、それよりも劣る選手が、申し訳ないという気持ちでやっているのかというところが一番」
森は10年目を迎えた今季、先発に本格的に転向した。開幕ローテーションに入れなかった今も、2軍のアップでは誰よりも大きな声を出し、1度の登板に向け集中力を見せている。森自身も「怪我したらダメですけど…」とした上で「肘が飛んでもいい、それくらいの気持ちでいっています。ファーム戦とはいえ僕には数少ないチャンスなので」と並々ならぬ決意を口にした。熱い気持ちを持って登板していること、それまで準備していることを野手が感じられなかったことが寂しかった。
小久保2軍監督の指摘は続く。投手と野手は持ちつ持たれつの関係性だ。足を引っ張ってしまったのなら、今度は助けるんだという強い気持ちが自分を成長させる。「そういう責任とか、申し訳なさを持ち合わせていないと、絶対に人として、プレーヤーとして絶対に上にいけないと思うんです。本当に淡白というか、軽いというか。僕は大事なところやなって思う」と強調した。
しかし、4回以降の打線はわずか1安打。内容以上に、何も伝わってこなかったことが、より語気を強めさせた。3回の交錯プレーにも「あんなことがあったら(現役時代なら)平謝りでした。1軍だったら多分チームで乱闘になっているくらいのものですよ」と真顔で言う。責任の所在に関しても「あいつ(生海)だけの理由かって言ったら、野手全体の責任としてって、僕はそう感じました」と言及した。
現役時代はキャプテンとしてチームを引っ張った。ホークスの常勝時代を築いてきたからこそ、本当の意味で「勝利を目指す」ということがどんなことなのかも分かっている。「1軍なら乱闘もの」とはっきり言ったのも、チームが本気で勝利を目指しているからだ。極端な表現ではあるが、これが小久保2軍監督の知る“常勝軍団”だ。
「投手と野手は、仲悪い時期はめちゃくちゃ仲悪いですからね。お互いに生活がかかっているので。点を取って打たれたらしっかり抑えろやって思うし、抑えてるのに点を取れなかったら打てやって思うし。西武の黄金時代なんて投手と野手はめちゃくちゃ仲悪かったので。それが本当の“チーム”ですからね。勝つためにやっているから」
試合後、選手にも同様のことを伝えたという。「いつまでも仲良しこよしだけじゃ、ここからは抜けられないと思います」。誰よりも本気で野球と向き合う小久保2軍監督だから、何よりも、この日の野手陣の姿勢だけは許せなかった。