「仲は良いですけど、負けたくないっていう気持ちはもちろんあります」
ペナントレース開幕で親友と明暗が分かれた。ソフトバンクの増田珠内野手が、悔しさを胸に燃えている。「負けたくないっていう気持ちはもちろんあります」。公私共に仲の良い正木智也外野手に追いつき、追い越すため、ファームで必死に汗を流している。
同い年の増田と正木は高校時代、同じ神奈川県の横浜と慶応でしのぎを削った。正木のプロ入り後は同級生ということもあって意気投合し、オフの日も時間を共にするほどの親友となっている。ただ、3月31日の開幕戦で正木が開幕スタメン、一方の増田は2軍でその日を迎えていた。
増田は千載一遇のチャンスを掴めなかった。オープン戦期間中の3月15日に1軍に昇格。右打者の競争に割って入る存在として期待されたが、8試合で20打数4安打、打率.200に終わり、ファーム降格を言い渡された。
「1本打てればっていうところで打てなかった自分の弱さもありましたし、そういう時にどうしても緊張してしまうというか、 なんとか1本打ちたいって欲しがってしまう自分がいた。そういうのも勉強になったと思って、今は常に同じ心理状況で、得点圏ではもちろん燃えますけど、心の波っていうものを減らして、打席に入るように心がけてます」
一方の正木はオープン戦の終盤に調子を取り戻し始め、最終的にアピールに成功。プロ2年目にして、開幕戦で「5番・中堅」に名を連ねていた。これを見た増田は「仲は良いですけど、やっぱり負けたくないっていう気持ちはもちろんあります。あいつにあって僕にないもの、僕にあってあいつにないものっていうのもあると思うので、負けないところを探して自分の長所をどんどん伸ばしていけたらなと思います」と刺激に変える。
4月1日に杉本商事バファローズスタジアム舞洲で行われたウエスタン・リーグのオリックス戦。「3番・右翼」で出場した増田は6回1死二塁のチャンスで左前に適時打を放った。この日は4打数1安打だったものの、状態は悪くなく「捉えてるけど、アウトになるっていう打席も1試合に1本ぐらいは常に出ている。そんなに悪くはなくて、もう少しヒットが出てくれたらいいなっていう感じ」と語る。
正木にない自身の長所として「状況に応じた打撃ができるところとか、塁に出てほしいところで四球を選んだり、バントもできる。チームというか、監督にとって使い勝手のいいっていうところは僕の長所でもあると思う」と挙げる。
1軍の大観衆の中でプレーする親友の姿を目に焼き付け、己を奮い立たせる。開幕1軍を逃しても、シーズンはまだまだ長い。いつか来るチャンスを今度こそ掴む。そのために増田はファームで必死にプレーしていく。
(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)