ソフトバンクの水谷瞬外野手が決意の5年目のシーズンを迎えている。2018年のドラフト5位で石見智翠館高から入団した22歳は、オフにドミニカ共和国に単身で向かい、武者修行。背水の覚悟で挑む今季への想いを語った。
18日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの中日戦。「7番・左翼」でスタメン出場した水谷は2回、1死三塁のチャンスで打席に立つと、左腕・橋本が投じたスライダーを捉え、左翼スタンドへ運んだ。今季1号となる先制の2ランだった。
6回の第3打席、7回の第4打席ではそれぞれ四球を選び、この日は3出塁。オープン戦期間中に1軍に参加していたものの、結果は出せずに、再びファームへ。「その中でも時間を有効に使って調整してきた。悪い中でも練習の中で状態を上げていく、今後に繋がる良い調整はできたんじゃないかと思います」。1軍での経験を無駄にすることなく、現状のファームでのプレーに生かしている。
「一昨年の秋から去年の春にかけて、短い野球人生でも、バッティングが一番どん底にあった。そこで、180度なにかを変えないといけないな、と思ったんです。世界を見てみたい、メジャーリーガーはどんなことをやっているのか、その人たちから僕はどう見えるのか、知りたくなったんです」
水谷は昨オフ、一念発起し、単身でドミニカ共和国に渡り、自主トレに励んだ。かつて広島で投手としてプレーしていたウィルフィレーセル・ゲレーロ通訳を通じて、ダイヤモンドバックスのケーテル・マルテ外野手への“弟子入り”を願い出た。現役メジャーリーガーもこれを快諾してくれ、年明け早々にドミニカへ旅立った。
得たものは大きかった。これまで取り組んできた練習、技術に対して「確信が持てたというか、間違っていなかったんだなと思えました」。さらにメンタル面でも「日本人の性格というのもあると思うんですけど、向こうの人はミスをそんなに気にしない。僕は三振して引きずることが多かったんですけど、そこは一番、勉強になりました」と学んだ。
四球の重要性についても、マルテからアドバイスをもらった。「フォアボールの大切さというか、ヒットだけが全てじゃないってことを言われた」。アピールしたいからこそヒットを求めがちになっていた。助言を受けて、今季は「打ちたい打ちたいって気持ちになると思うんですけど、そこを我慢してフォアボール、ウェルカムって感じ」で打席に立っている。
自身が崖っぷちに立たされていることを理解しているからこそ、覚悟を持っての自主トレだった。「もし仮に今年でクビになって『行っておけば良かった』といった後悔したくないと思った」。今季が5年目。他球団ではすでに戦力外になった同期もいる。そろそろ1軍での結果が求められるのも自覚している。
ただ、焦らず、目の前のことに集中していく。「自分を信じて落ち着いてやるということを一番に考えています。考えすぎずシンプルに、ドミニカはどのレベルでも野球選手ということに対してリスペクトがある国なんで、自信を持ってやれ、落ち着いて焦るなということは、言われました」。現役メジャーリーガーとの自主トレで得た教えを胸に、水谷が飛躍を目指す。