逃げ続けた生活面「もう技術じゃない」 叱責に涙も…ロマン砲がつかんだ覚醒のヒント

紅白戦で一発を放ったソフトバンク・リチャード【写真:藤浦一都】
紅白戦で一発を放ったソフトバンク・リチャード【写真:藤浦一都】

紅白戦でリチャードが本塁打 アーリーワークの成果見せる

 ソフトバンクは14日、春季キャンプの第3クール4日目を迎えた。紅白戦を行い、紅組の「10番・一塁」(特別ルール)で出場したリチャード内野手がソロ本塁打を放った。納得の一撃の裏には、1軍で本塁打を打つための「思考の変化」があるようだ。

 4回2死、右腕の泉圭輔投手と対した。外角球を振り切ると、打球は放物線を描いて右中間席に着弾。8日にはエンドランの練習で本塁打を打ってしまい、藤本監督からも厳しい言葉をかけられて涙を流した。やっと出た結果に、安心した表情でダイヤモンドを回った。

 ここまでアーリーワークには皆勤賞。毎朝、室内練習場でバットを振ってから全体練習に合流している。同じ流れで一日を過ごすようにしているのは、周囲からの言葉を信じているからだ。

「『もう技術とかじゃない』とよく言われるので、それを信じています。技術じゃないんだって、自分で信じて。技術に目を向けがちなんですけど。そういうところから、生活面は変わらないようにした方がいいのかなと思って」

 昨季は2軍でウエスタン・リーグ新記録となる29本塁打を放った。本塁打を打つだけの形はもうできている。あとは1軍の舞台でどう表現するかがリチャードにとっての課題だった。これまでは打てない時は技術に目を向けがちで、姿勢の部分で藤本監督からも厳しい言葉をかけられることも多かった。野球以外の部分と向き合うことを決めたことが、リチャードにとっての覚悟だ。

 大切だと思ったのが、一定のルーティンを作ること。アーリーワークに必ず参加するのも、リチャードなりに、どんな時でも信じられるものを作ろうとしているからだ。「どういう場面でも変わらないように、ルーティンをした方がいいと山川(穂高)さんも言っていたので。朝の7時に起きて、トイレに行って……」。自分の“原点”を作った成果が、一発となってあらわれた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)