ソフトバンクの後藤芳光・球団社長兼オーナー代行が今オフ敢行した大型補強や4軍制、さらには球団として掲げる“目指せ世界一”への考えを語った。この日は王貞治球団会長、藤本博史監督らと東京・港区のソフトバンク本社を訪れ、孫正義オーナーにオーナー報告を実施。その後の報道対応で今オフの補強の意味などを明かした。
約1時間半、孫オーナーと昼食を共にし、藤本監督や王会長と昨シーズンや今オフの動向の報告、今シーズンに向けての意見交換などを交わした後藤社長。報告会を終えて「改めて、オーナーが強い意識を持っているのは、ホークスは強くあることでファンの期待に応えるということ。強くあるために、必要な作業をする。我々フロントも、チームもトップを目指さないといけない」と今季にかける思いを口にした。
このオフ、フロントはFA市場で近藤健介外野手、嶺井博希捕手を獲得。外国人でも、ロッテから自由契約になったロベルト・オスナ投手や元阪神のジョー・ガンケル投手、ウィリアン・アストゥディーヨ内野手、コートニー・ホーキンス外野手を加えた。さらにレンジャーズ3Aから自由契約となった有原航平投手まで補強。空前の大補強を成功させ、他球団を震撼させた。
後藤社長は今オフの補強、新設される4軍制に関し「非常にオフの補強、4軍制の進捗は(オーナーにも)満足いただいていると思います」とコメント。さらに「補強も今、我々のチームが今後10年の計でやるべきことは何かということに特化して考えた結果なんですね。FAでいい選手がいっぱい出てきているから、片っ端から取ればいいという発想とは全く違う視点で取り組んでいます。そこはオーナーもよく理解をいただいています」と語り、球団としては闇雲に選手を“乱獲”したのではなく、違う視点で補強策を練ったのだという。
「明確に、チームにとって本当に必要な部分をどう補強するか。今、我々には多くの選手がいるわけですけど、1軍を目指している選手たちが、乗り越えていくいい素材として、機能してもらえるような、そういった補強が一番望ましいわけです。補強する選手は若手に比べれば、(年齢でも)上なわけですから、若手はいつか彼らを乗り越える時代が来る。その自分が目標とすべき壁が高ければ高いほど、若い選手に乗り越える目標ができる。オーナーはやっぱり目標を持つことが大事だと何度もおっしゃっていたので。補強に関しても、若手の選手にとっての目標になるような選手だと思う。彼らの能力そのものに加えて、そういう側面が非常に重要だと思います」
補強において重視したのは、短期的なチームの強化という視点はもちろん、中長期的に、既存戦力の目標、お手本になれる選手をチームにそろえることだと後藤社長は語る。若手の台頭に“ふたをする”という考えはなく、今年の近藤のような高い壁、目標となる選手を越えた選手こそ、チームのレギュラーになるべきで、そうした競争を常にチーム内に用意しておくことが“10年の計”で見た時にチーム強化につながるという編成面での考え方になっている。
王会長もこれに同調する。「FAで入ってきた選手は経験もありますし、レベルも上ですね。その人をどう超えるかと工夫をすること。上をふさがれた、俺たちはもうダメだと考えるような人はこの世界に必要ないんです。それを乗り越えるにはどうしたらいいのか、自分の考えを一歩前進させて考えられるような選手じゃないと、この世界は生き残れないですから。このオフの補強は若い選手たちにとっては、どう受け取るかによって、いいチャンスが生まれてくるだろうと思っています」と語る。
4軍制もまたしかり。投資を惜しまず、他球団を凌駕するかのごとく、チーム強化に邁進するのは、本気で「世界一」を目指しているからだ。後藤社長は「世界一になるためにまず、じゃあ日本一だと思っています。並行して、我々は世界一になるために、ホークスがどういう道を選ぶかということは別途、検討、研究し続けています」と“世界一への構想”を明かす。
現状、世界の野球界のトップはMLB。NPBの球団がMLB球団と頂点を争って戦う機会はないが、球団の中では“世界一”となれる様々な可能性を模索している。後藤社長も「我々はNPBの球団であってMLBに参加しているわけでもありません。世界最強のチームであるソフトバンクホークスとはこうだと証明する方法が、どうすればあるんだろうと考えることだと思うんです。方法は決して1つではなく、いくつもの道があるんだと思っています」と強調する。
空前の大補強に賛否あることは球団も承知している。そんな中でもホークスが目指すのは毎年のように優勝する常勝軍団であり、将来的な世界一。「補強とか、お金をかければトップを取れるというものでないことはメジャーリーグでも証明されている。強くあるためには一丸となって強い気持ちを持って、日本一に進んでもらうということが一番大事。我々は徹底的にサポートしていこうと思っています」。後藤社長の言葉からは今季にかける、そして未来にかける思いがヒシヒシと感じられた。