3打席で交代は松田宣浩の希望「最後まで気配りの人」 小久保2軍監督の一問一答全文

タマスタ筑後での2軍戦に出場したソフトバンク・松田宣浩【写真:上杉あずさ】
タマスタ筑後での2軍戦に出場したソフトバンク・松田宣浩【写真:上杉あずさ】

「4打席フルで行くと思っていたら『3打席でいいです』って言うんで」

 ソフトバンクの2軍は1日、タマスタ筑後でのウエスタン・リーグ中日戦に延長戦の末に2-3で敗れた。この日は今季限りで退団する松田宣浩内野手のホークスでの最終戦。「4番・三塁」でスタメン出場すると、3打数1安打。7回の守備で途中交代した。

 試合後の小久保裕紀2軍監督の一問一答全文は以下の通り。

――松田を4番サードで起用。
「3週間弱、2軍でやらせてもらいましたけど、彼自身が退団のスピーチでもありましたように、この先どうするか決めにきた2軍生活だったと思うんですよね。彼自身のいろんな気づきの中に我々にとっても非常に良い影響を与えてくれる3週間だったし、若い選手たちには松田の姿をしっかり目に焼き付ける、プラス松田に若い選手のプレーをしっかり目に焼き付けてもらえた。ああいう話をして送り出したんです。チーム初ヒットが松田。非常に良い、引退試合じゃないからね、非常にいい退団試合。珍しいですね。ここまで球団が用意してくれるって、彼自身も感謝した試合だったと思う」

――チームの気づきという話も。
「やっぱり一番は元気の良さ。自分が打てなくてベンチに帰ってきても彼は先にやっぱりすぐに声を出す。次の打者にも激励、声援を送るっていう姿っていうのも1軍でも2軍でも変わることなくやっている選手。やっぱり同じ野球を環境によって変えないっていうのが彼の1番の長所であり、尊いことだなと感じながらこの3週間は彼の姿を見てました」

――松田選手にこの3週間でかけた言葉は?
「結局最後に決めるのは自分なので、自分が納得する答えが見つかるといいね、というところで。あとは選手の起用法について、松田の起用法について話したんですけど、彼もやはり年齢が年齢で、若手の教育、育成の場に来て、選手の出場機会を奪うということは非常に敏感になっていたんで、それはあんまり気にしなくていいと。こちらがそれを判断して起用するから。最後の最後まで気配りの人でした」

――今日の交代のタイミングは?
「4打席フルで行くと思っていたら『3打席でいいです』って言うんで。だったら終わってそのままベンチにいるより、これだけお客さんが見に来ているわけなので、そのまま引っ込むよりは、守備に就いた後に戻る方がお客様はいい。やっぱりファンにあれだけ愛された選手なので。ファンに最後の姿を見せるっていうことが、我々のできる事なのでそうさせてもらいました」

――どんな野球人生を歩んで欲しい。
「多分野球を嫌いになることは最後にないでしょうから、やりつくした、燃え尽きた、熱男がそのまま灰になった、ぐらいまでやって欲しい。だから、どこかの球団があることを祈っていますし、1つ言えることは、どの球団に行ってもマイナスはない。彼の打てる、打てないは別にして、彼の存在はどのチーム、どの球団に行ってもプラスの影響を及ぼす。ベテランが自ら率先してウォーミングアップの一番前を走り一番大きな声を出してチームを盛り上げるっていう姿は非常に尊くて、なかなか長らくプロ野球を見ていますけど、ベテラン自らそこまでできる人は見たことない。そういう点では全然損はないと思う。松田の最後をね……まだ野球が続けられることを祈っています」

――小久保監督が現役の頃はチームメートとしてどんな思いで見ていた?
「最初は『まだまだサードは譲れんな!』って思っていましたけど、2010年、11年に連覇した辺りには僕もファーストに回りながら、彼の球をファーストで受けてましたけど、非常に肩の強さもあってゴールデングラブ賞も8回ですか? それを誇るような送球が安定しているという印象が強いですね。サード向きのね。やっぱりチームの中で1番元気出しながら、やっぱり盛り上げられるポジションはサードだと思うので、サードが似合ってた選手だった」

――松田選手に向けてのメッセージ。
「どの球団に行っても手本になって後輩を引っ張れる、そういうベテランとして野球人生を送ってください。間違いなくマッチならできるし、あとは大好きな『熱男』の言葉を最後の最後まで響かせられるように本塁打を打ってください」

――明石選手からも相談や報告はあった?
「はい。引退を決めた後に『今シーズン限りで引退します』という言葉をいただきました。一緒に自主トレをした後輩でもありましたし、長く現役を一緒にやった選手で彼に言ったのは『大成功』。自分でも19年できると思ってなかったと思うんです。それは正直僕も思ってなかったんですよ。そう考えたら、やっぱり彼は野球センス、最後の最後まで動きが若かったなと……。やっぱり自分に対する厳しさ、体の脂肪含めて全く体型が変わることなく、あの年齢までやったということが彼のパフォーマンスを下げなかった1つの要因だと思う。そういう見習うところはいっぱい、若い選手に見てほしいし、最後は健志らしいコンパクトなスイングでヒットを打って終わって、有終の美を飾れたなと思いますね」

――明石との思い出は?
「僕が2軍監督、コーチの時じゃないですけど、秋山さんの技を盗んだなって最後まで印象的やったんで……。あとは2軍監督としてはホークスのベテランみんなそうなんですけど、彼らにはあまり気を遣わなくて、逆に『彼らを見てみろ』と若い選手に言える存在の選手が多い。これはホークスの良さなので、伝統の良さとしてベテランが手本になれるのは脈々と受け継がれていると思う。この先もずっと受け継がれてほしいこと。やっぱり首脳陣が気を使いすぎて、腫れ物に触るベテランになるとチームはギクシャクします。それがホークスでは、松田にしても、明石にしても、選手起用にしても、交代の時に、代打の時も全くそういうことは一切ない。やっぱりやってくれたっていうのが1番の彼らから学ぶべきところで、後輩たちが見習ってほしいところだと思う」

――明石選手へのメッセージは。
「健志は何するんかね? 球団から声をかけられているか分かりませんけど、野球界に残るにしても、学ぶにしてもやっぱりこれからもう一つ違うスタート。一旦、現役時代の自分の栄光を横に置いてスタートした方が吸収は早い。多分いろいろあるでしょうが、一旦置きながら第二の人生をスタートして欲しいと思う」

(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)