「力をつけた状態で戻りたい」精巣がん手術から復帰した大関友久が語った思い

ソフトバンク・大関友久【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・大関友久【写真:藤浦一都】

10日の3軍交流試合で実戦復帰し1イニングを3者凡退に封じた

 ソフトバンクの大関友久投手が10日、タマスタ筑後で行われた3軍交流試合・関西独立リーグ選抜戦で実戦復帰した。1イニングを投げて3者凡退。精巣がんの手術からわずか1か月ほどで実戦に復帰するまで回復し、降板後には現在の胸中を語った。

 大関は精巣がんの疑いで8月2日に左睾丸の高位精巣摘除術を受けた。病理解剖の結果、摘出された腫瘍以外にがん細胞は入っていないことが確認され、自宅療養を経て、同24日にリハビリ組に合流。キャッチボールやランニングなど徐々に練習の強度を上げていき、術後わずか1か月ちょっとで実戦復帰を果たした。

 7月30日の西武戦以来となる実戦のマウンドに上がった大関。先頭打者を右飛に打ち取ると、続く打者は中飛。最後は左飛で1イニングを3人で封じた。この日の最速145キロ。1か月半ぶりの実戦マウンドを終え「やっぱり投げる感覚っていうところで自分の心配なところあったんですけど、試合に入っていくというところで、自然とリズムだったりタイミングだったりが試合前から合い始めていたので、実戦で投げることで良くなってきたなっていうのがありました」と手応えを口にした。

 突然、大関を襲った精巣がんの疑い。日常生活に支障があったわけではないが、患部にしこりを感じて検査を受けたところ、すぐに手術を受けることになった。「やっぱりどれくらい離脱するのかとかもわかんなかったですし、手術のときとかは先が分からない状況だった」と、不安だった胸の内を語る。

 幸いにも早期発見でき、がん細胞も摘出された腫瘍以外になかった。術後も良好で、リハビリ組への合流後は練習もしっかりと行えた。「体には不安なく、おかげさまで順調にやっている。今はすごく先が見えてきてるというか、全然気持ちはやっぱり違っています」。こう語る大関の表情に不安の色はない。

 左腕の背中を押したのはファンからの声援だ。復帰へのモチベーションの源を問われると「いろんな応援してくださる方もそうですし、テレビで見てるチームを見てもそうですし、いろんな思いがある。急ぐつもりじゃないですけど、しっかりやることやってという気持ちでやってきたら、思ったよりも早く回復できた」。ファンや周囲の応援、そして優勝争いに向けて奮闘するチームメートの姿に力をもらった。

 ただ戦列に戻ることが目標ではない。離脱前よりもさらに進化、成長した姿で戻ることを目指している。「前の良かった時の感覚と、自分の中でもう少し改良したいなっていうところを2つ合わせていってみた。そこが形になって、うまくバランス取れたかなと感じます。今の段階でバッターにどれくらいストレートで差し込めているのかをまず一番確認したいってところで上がったんですけど、今こういう感じなんだっていうのがしっかり分かりました」。復帰戦でも課題を持ってマウンドに上がっていた。

 今季中の1軍復帰も見えてきた大関。「ここまで投げられるようになってきてるんで、あとは感覚を戻す部分と、離脱した期間で良くしていける部分というのもあると思うんで、何とかチームの力になれるように、もうちょっと力をつけた状態でしっかり戦力になって戻れるように自分のできる限りの準備をしたいなと思っています」。成長した姿で再び1軍へ。病を乗り越えた大関が大きな一歩を踏み出した。

(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)