栗原や上林をはじめ、故障やコロナ陽性で離脱者が続出した前半戦
前半戦を46勝40敗1分の貯金6、パ・リーグ首位で折り返したソフトバンク。開幕直後に栗原陵矢外野手が負傷離脱するなど故障者が続出、6月末には新型コロナウイルスの陽性者が相次ぐなど苦しい状況での戦いが続いたものの、なんとか2位・西武と0.5ゲーム差の首位でオールスターブレークを迎えた。
今季が就任1年目の藤本博史監督にとっては頭を悩ませ続けながら、戦ってきた87試合。指揮官の総括の言葉とともに投手、野手に分けて前半戦を振り返っていく。
「怪我人がすごく多いなっていう前半戦ですね」と開口一番に総括した藤本監督。開幕直後に栗原が左膝前十字靭帯断裂で離脱すると、故障者が相次いだ。柳田悠岐外野手が左肩の痛みで4月上旬から一時戦線を離れると、上林誠知外野手は右アキレス腱断裂で今季中の復帰は絶望的となった。
6月下旬にはジュリスベル・グラシアル内野手、アルフレド・デスパイネ外野手の両助っ人や甲斐拓也捕手、野村勇内野手が新型コロナの陽性判定を受けて戦線を離れた。さらに三森大貴内野手が左手親指を骨折、中村晃外野手が腰痛を訴えて出場選手登録を抹消に。開幕スタメン9人のうち7人が一度は出場選手登録抹消となり、現在も4人が不在という状況になっている。
栗原の穴を埋めた柳町、“ジョーカー”として確固たる地位を築いた牧原大
藤本監督が「緊急事態」と言い表していたように、チームは苦しい状況での戦いを強いられた。なんとか勝ちを拾い、パ・リーグ首位で折り返し地点を迎えることができた要因として、指揮官は「怪我人とかコロナで離脱した人たちの代わりに、選手がたくさん出てきた」と挙げる。代役としてチャンスが訪れた若手の奮闘が目立った。
その中でも藤本監督が、野手のMVPに挙げたのが柳町達外野手。栗原の離脱に伴って代役として昇格し、4月は.375と高い打率を残し、レギュラーに近い位置にいる。ここに来て疲れもあって状態を落としているものの「最初はスタメンじゃなかったんですけど、栗原の怪我とかそういうのが出て、結局はレギュラーをとりつつあるんでね。柳町の活躍なくして今の位置にはいないんじゃないかなと思います」と指揮官は評している。
もう1人、重要な働きを見せたのが牧原大成内野手だ。藤本監督が「ジョーカー」と評して“切り札”的な役割を託した存在。二塁、三塁、遊撃、中堅と様々なポジションをこなし、さらにはスタメン、途中出場でも役割を果たしながら、6月の半ばには打率.330前後を残していた。
ただ、誤算だったのは想定外の離脱者の多さだった。「ジョーカーで1年間やってもらいたかったんですけど、これだけ怪我人が出て、もうレギュラーになってしまっている」。シーズンをフルで戦い抜いたことがなく、体力的にも不安を残していた牧原大。だからこそ、藤本監督は“ジョーカー”として適度にスタメンから外して休ませつつ、コンディションをキープさせることを目論んでいた。
チーム打率.255、323得点はいずれもリーグトップながら…
離脱者の続出により、牧原大をほぼ常時スタメンで起用せざるを得なくなった。予想通り、日々、試合に出続けることによって疲労が溜まり、目に見えて状態が落ちた。7月は打率.169。指揮官も「牧原(大)の場合はもう昔から知っているんで、1年間まだやったことないというのもあるし、ジョーカー的な存在で出ている方が1年使えるのかな、というところはすごく感じていた」と語っている。
この2人の他にもチーム2番目の8本塁打を放っている野村勇内野手やプロ初スタメンで2打席連続本塁打を放った渡邉陸捕手、野村大樹内野手や増田珠内野手といった若鷹たちも1軍を経験し、それぞれがインパクトを残しており、藤本監督も「みんないい経験をしていると思うし、その経験を糧にこれからもっともっと実力をつけてもらったらいいんじゃないかなとは思います」と目を細めている。
とはいえ、なかなか歯車が噛み合っているとはいえないのが現状だ。チーム打率.255も、323得点もリーグトップの数字ながら、打線が奮わない印象が強い。それは今季の試合展開が影響しているのだろう。先制した試合では39勝12敗と強さを見せる一方で、先制を許した試合は7勝28敗と日本ハムと並んで最も勝利数が少ない。延長戦は4勝5敗1分、サヨナラ勝ちも1度しかなく、なかなか劣勢を跳ね返すことができていない。
指揮官もこの点を課題と感じている。「前半戦は先行逃げ切り型のチームだったと思うんですが、後半は粘り強く、先行されても、何とか粘って逆転できるような粘り強いチームにしていきたい」。かつては逆転勝ちや接戦での勝負強さが光ったソフトバンクの戦い。後半戦は最後まで目の離せない勝負強さの光る戦いを期待したい。
(鷹フル編集部)