あえて口にした…CSは「普通じゃない」 野球が持つ力、小久保監督がナインに伝えたこと

ナインを集めて訓示するソフトバンク・小久保裕紀監督【写真は球団公式Xより】
ナインを集めて訓示するソフトバンク・小久保裕紀監督【写真は球団公式Xより】

球団広報から伝えられた「10時10分までは非公開」…指揮官が伝えたこととは

「2024 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージが、16日から開幕する。ソフトバンクは15日、みずほPayPayドームで全体練習を行った。決戦を前にして指揮官が選手たちに伝えたのは、プロとしての意義だった。

 午前9時17分、球団広報から「10時10分までは非公開とさせていただきます」と報道陣に伝えらた。チーム関係者しかいないグラウンドで、小久保裕紀監督は選手たちを集めた。レギュラーシーズン中も3月29日の開幕戦や、柳田悠岐外野手が離脱した翌日など、重要な場面でしか自らが発言する場は作ってこなかった。2勝1敗で日本ハムが突破したファーストステージを見て、誰よりも、小久保監督自身が心を揺さぶられていた。

 円陣で伝えた言葉について柳町達外野手、正木智也外野手、そして小久保監督の視点で迫っていく。まずは柳町が明かした。

「まず日本ハムに相手が決まったということと、キャンプに入る前の全体ミーティングで、人々に感動を与えるのが僕たちの仕事だっていうことで。このCSのファーストステージを見てて、そういうのを改めて実感した試合だったし、これから僕たちがファイナルステージを戦うので。ここに来るホークスファンの方々に感動を届けられるようなプレーをやっていこうっていう話をされていました」

 毎年2月1日に幕を開ける春季キャンプ。その前日にあたる今年の1月31日、指揮官はチーム宿舎で選手たちに、こう伝えていた。

「孫(正義)オーナーが講演された時に話されていた。AIが企業試験まで合格している中で、『野球は永遠』『スポーツは永遠』だとおっしゃっていました。今日のみんなにはその孫オーナーの言葉を僕は伝えるべきだと思ったので。世界一を目指すチームになる、なぜかというと野球というのはもっと価値が上がっていくものになるから。人は感動なしでは生きていけない。人々に感動、興奮、熱狂、喜び、悲しみ、悔しさ、そういう心が震えるものが残っていく。だからスポーツは永遠だと、だから我々はそのチームを目指していかないといけない」

 スポーツにしかない魅力があるということを、力強く訴えた。ファーストステージで激闘を繰り広げた日本ハムとロッテの姿を見て、改めて感動が大切だと感じた。プロ5年目を迎えた柳町も「僕も(日本ハムの)結果を見ていました。やっぱり熱い試合をしていますし、ここで感動を与えられるように。僕たちも勝ちにこだわってやっていきたいなと思います」。背筋を伸ばす訓示となった。

 結果が全ての短期決戦。若鷹にとっても、もちろん緊張の舞台だ。正木は「プレッシャーがかかる場面で回ってきたりとか、ピンチで投げるピッチャーは相当プレッシャーがかかると思うけど、何か1つ自分で決めたものがあればプレッシャーに打ち勝っていけるから。すでに持っている人は継続してそれをやればいいし、まだ見つかってない人は明日までに何か考えて打席だったりマウンドに立てるように、といった話でした」と明かす。柳町が語った視点とは、また別角度の内容を明かした。

 正木自身、今季は80試合に出場して打率.270、7本塁打、29打点。6月21日に1軍昇格して以降、結果を残し続けてキャリアハイのシーズンを過ごした。「小久保さんと個別で1回、シーズン中に話した時も似たようなことを言われました。その時は『バッティングで自分が信じてきたもの、ずっとやってきたものが、結局は助けてくれるから。それを信じてやりなさい』と言われました」と振り返る。緊張する大舞台だからこそ、今までやってきたことを疑わないこと。積み重ねてきた以上のものは出せないと知っているから、正木も指揮官の言葉に共感した。

 最後は、小久保監督本人の視点で明かされる。短期決戦に対して「普通じゃない」という言葉で表現した。1勝が重いのは間違いないからこそ、明確な志が必要となる。

「基本的に人は、将来まだ起こっていない不安に対して脳を43%使っているから。普通にしていれば不安にかられるから、そうならないように自分でプラスになる決め事を1つ決めなさいという話はしました。普段からずっと言っていることです。打たれたらどうしようとか、ここでミスしたらどうしようとか、打てなかったどうしようとかって考えるのが人間なんで。それは普通なんで。だから普通じゃない状態を自分で意識してつくることが大事ですよ、っていうことです」

 やれることは、全てやった。だから91勝49敗3分けで、リーグ優勝ができた。ファンに感動を与えるために、小久保ホークスのポストシーズンが幕を開ける。

(竹村岳 / Gaku Takemura)