斉藤和巳4軍監督から「厳しめの口調」 大野稼頭央の春…首脳陣から感じる大きな期待

ソフトバンク・大野稼頭央【写真:竹村岳】
ソフトバンク・大野稼頭央【写真:竹村岳】

2月以降にも生きていた和田毅との自主トレ…継続した体作りで体の数値にも変化が

 偉大な先輩から、金言を授かった。プロとしての全てが詰まった言葉だ。ソフトバンクの大野稼頭央投手は、2月の春季キャンプを筑後のC組で過ごした。2度目の球春を「基本的に体作りフォーカスしてやっていたキャンプでした」と振り返る。生きていたのは和田毅投手からの教え。そして、斉藤和巳4軍監督からの言葉が胸に響き、残っている。

 体作りだけに重点を置いて過ごしてきた。ブルペンに入ったのは2月前半の2回だけ。間食も増やしたことで体重にも変化があり「自分の今までの増え方としては、だいぶいい上がり方をしました」。2キロ増えて、69キロに到達した。筑後市内の「若鷹寮」で、ウエートトレーニングに重点を置きながら、まずは故障しない体、投球に集中できるだけのフィジカルを鍛え上げてきた。

 1月には和田の自主トレに初参加した。ハードなトレーニングだけでなく、毎晩の食トレでも有名だ。「今まではあんなに食べてこなかったので、勉強になりました。(1月は)毎日、自分の“過去イチ”の量が更新されていました。こっちに帰ってきてから自分でなるべく多く食べるようにしてきました」と胃袋が大きくなったことは、2月以降にもしっかりと生きていた。食堂に置いてあるおにぎり1つでも、積極的に口に運んで、体作りに繋げてきた。

「和田さんの話を聞く中で、どういうことを摂ったらいいのか勉強できました。こっちに戻ってきてからも自分で考えて摂るようにして、わからないことがあったら栄養士さんとか、食に詳しい人もいるので、そういう人たちに聞きながらやっています。タンパク質も多めにして、ビタミンとかもなるべく食べていました」

 筑後で過ごした1か月では、新しい出会いもあった。大野が挙げたのは斉藤和巳4軍監督と、奥村政稔4軍ファーム投手コーチ補佐の2人だ。斉藤4軍監督からは「ひたすら『飯食え』って言われています」と、やはり体作りが今の自分がやるべきことだと笑顔で明かす。2023年は1軍投手コーチだったが、今季からはファームで若鷹を育成することになった。大野が切り出したのは「あとは自分に対しての、期待からの言葉をもらったり」。指揮官から感じる大きな期待だ。

「『結局は自分次第だから』『そこで何をするかで変わってくるんだ』ということを、キャンプ始まってからずっと言われています。集合の時にも言われますし、1対1の時はもっと詳しく言われます。自分に向けてという感じで、そういう時は厳しめの口調で言ってくださるので(斉藤4軍監督からの期待は)ものすごく感じます。その期待を台無しにしないように」

 2度の沢村賞に輝いた4軍監督からの言葉は重い。エースとしてマウンドに君臨し、雄叫びを上げる理由についても「いろんなものを背負っていると思っていた。自分だけの1球じゃなかったから」とキッパリ答えていた。自分の1球にはチームの勝利はもちろん、野手の方々の生活もかかっている。マウンドでは誰も助けてくれないからこそ「この世界、結果も大事やけど最後は自分でケツ拭かなあかんねんから」と、語っていたプロとしての矜持。その一端を、大野も接する中で感じ、言葉として受け取っていたようだ。

 鹿児島県の奄美大島出身の左腕。ホークスのエースだった斉藤4軍監督の存在は「昔の映像は色々とYouTubeで見たりします。エグいしか出てこないです……。その人が目の前で教えてくれるので、いい刺激を与えてくださります」と表現する。現役時代のマウンドで雄叫びを上げながら、打者を圧倒する姿が代名詞で、大野も「めちゃくちゃカッコいいです。投げる球もすごいですし、マウンドにいる時の立ち姿がすごくカッコいいなって昔から思っています」と追いかける背中の1つだ。

 奥村コーチも、寄り添ってくれる指導者の1人。昨季も3軍でともにプレーした経験があり「自分のシーズン中の状態を、選手として見てもらっていました。そういう目線からも話とかアドバイスをもらったり」と近い目線で声をかけてくれる。現役時代から“兄貴肌”で後輩を引っ張るのも、奥村コーチの魅力だった。大野も「最初はめっちゃ怖かったです(笑)」と言いつつ「現役に比べて今の方が、明るいというか、開いてくれている感じはあります。しゃべってみたら、普通に優しい人で面白いです」と心を開いている。高卒2年目の19歳。周囲のサポートを力に変えて、今は鍛錬を積んでいく。

 今後の実戦登板の見通しについては「4月後半から5月中旬の間だと言われています」と明かす。マウンドに立ちたい気持ちを少しだけ抑えながら、今は自分と向き合う日々だ。「自分としては時間を与えてもらっている。上のコーチの方々から『じっくりやれ』と言われているので、そうすることが近道だと思ってやっていきたいです」。足元を見つめる大野の将来を、たくさんの指導者たちが期待している。

(竹村岳 / Gaku Takemura)