スケールの大きさ、秘めるポテンシャルは底知れないものがある。ソフトバンクの育成ドラフト9巡目ルーキー重松凱人外野手だ。187センチ、89キロと恵まれた身体を誇り、思い切りの良いフルスイングを見せる。パワーとスピードを兼ね備えた将来が楽しみな大型野手だ。
「大道(典良)コーチや城所(龍磨)コーチにいろいろ技術面で教えてもらいながら練習をして、その成果が前回の試合や今日の試合でも出て、自分の魅力であるフルスイング、積極性と長打力が最近戻ってきているので手応えはあります」。適時三塁打を放った21日の九州アジアリーグ・宮崎との3軍戦後にこう語った重松。3軍、4軍戦で28試合に出場し、打率は3割を超えている。
地元は福岡県北九州市。進学校である戸畑高から野球の名門・亜大に進み、心身共に鍛錬してきた。ただ、大学時代はレギュラーには手が届かず、なんと“公式戦通算1安打”。ただ、アマチュア球界でもトップクラスのスイングスピードを計測するなど、ポテンシャルの高さを評価され、ホークスが育成指名に踏み切った。
プロの世界に入ると、同じように長打力を持ち味とする選手がいる。「同じ3軍だったら水谷瞬や山本恵大さんとか、長打力を持ち味としている選手がいて……。みんなが打っている中、自分が打っていなかったら少し焦りだったり悔しさも感じます。でも、そこで下を向かず、それを超えてやるんだっていう気持ちで前を向いてできています」。重松にとって、大学時代に乏しかった実戦経験を数多く踏むことができるホークスの育成システムは魅力だろう。
同じ長打力ある外野手を意識し、競争意欲をかき立てられている。「自分より打っている選手が3軍にいたりとか、3軍で打っている選手でも2軍に行ったらスタメンで出られなかったり、ちょっとダメだったらすぐ3軍に戻ってきたりっていう現実を間近で見ている。危機感だったり、もっとやらなきゃいけないという気持ちにさせてくれる」。このチームでのし上がっていくことは簡単ではない。ファームでの競争の激しさも肌で感じている。
「自分は(大学時代に)試合に出られなかった分、今めちゃくちゃ楽しく野球ができています。やっぱり試合に出ていると、良くも悪くも結果が出てくるので、その結果と向き合いながら練習やトレーニングができている」と充実感が滲む。全てをポジティブに受け止め、野球を心から楽しんでおり、表情も清々しい。
目下の課題はタイミングの取り方だという。「ストレートだったらストレートだけ、変化球だったら変化球だけになってしまう所がある。軸足にしっかり体重を乗せて、ゆっくり間をとって、相手ピッチャーにタイミングを合わせながら打つっていうのを意識しています」と、日々の練習に取り組んでいる。
キャンプ中に右肩の肉離れで離脱も経験した。「今振り返ってみれば、その期間で今までやったことのない腹圧トレーニングだったり、技術練習ができない分、バイクを漕ぐ有酸素系で体力面や身体の柔軟性を見つめ直しながらできた。それを今も継続しながら、維持できるようには意識してやっています」。負傷での離脱も糧にして、前向きにトレーニングに励む。
「やっぱり長打力が売りなので、小さい目先の結果にとらわれるようなバッティングや走塁、守備をするんじゃなく、支配下を勝ち取って1軍で活躍する、2軍に早く上がってやるっていう大きな目標に向かって、今やるべきことを逆算しながら、スケールの大きい選手を目指してやっていきたい」
何度も口にしていたのは「自分らしさを貫ける選手になりたい」。目の前の結果を求めて、小さくまとまるのではなく、スケールの大きい選手になりたい。自分の個性を貫こうとする覚悟は成長する礎となるだろう。