ファームを預かっている指揮官として、心からの本音だった。ソフトバンクの2軍は16日、ウエスタン・リーグのオリックス戦に3-4で敗れた。この日は7年ぶりに1軍の本拠地であるPayPayドームでの2軍戦開催。同リーグが開幕して2か月が経過した現状について、小久保裕紀2軍監督は「闘争心が落ちてくる」と表現した。そこに隠された心とは―。
この日は先発の田上奏大投手が5回2/3を投げて3失点。打線は6回に3点を奪って追いついたが、8回に椎野新投手が勝ち越し点を献上した。PayPayドームでの開催に「去年コーチの方から、この舞台でできないですかという話があって。球団の方に相談して実現した」と経緯を語る。1軍にできるだけ近いような緊張感を、若鷹たちに味わってほしかった。
2軍は1軍に選手を送り込む場でもあり、育成を任されている場でもある。今季からは4軍制が新設されて、これまでよりも多くの意味を持つ場となった。小久保監督は「2軍って基本的に守られているので」という。本来なら1軍を目指してガツガツするべきである若鷹が、今、大切にしてほしい気持ちを小久保監督は言葉にした。
「1割台でも試合に出られるし、あまり抑えていなくてもマウンドにも立つことができる。1軍の方がシンプルですよね、打てなかったらクビになるので。その辺を話した時に『守られている立場で何が一番必要になってくるのか分かるか』って話をした。消えてくるのは闘争心です。危機感からくる闘争心は落ちてくる」
「それは自分の中でも持ち続けないと。あと勝負ごとですけど、守られていると、勝ったり、その場の勝負についても薄れてくるので。だって(試合に)出て当たり前なので。それを自覚してやってくださいという話はしました。そこが一番難しいところですよ、ファームは」
試合に出場することが“当たり前”になることで、モチベーションの維持が難しくなる。首脳陣から口酸っぱく伝えようとも、小久保監督ですら「難しい」と理解を示す領域だ。だからこそ、若鷹は殻を破っていかないといけない。「3軍には落ちたくないっていう(のは伝わってくる)。上がってきた選手をうまく使ったりして刺激は入れているんですけど。あとはわからないです。選手に聞いてください」と首脳陣も工夫を凝らしているところだ。
だからこそ、PayPayドームの開催に意味がある。立ったことのない1軍の舞台なら、距離感もイメージしにくい。本拠地でプレーすることで「4軍までできて、120人以上がいて、現実的にここで今年プレーするのが難しい選手が多い。少しでもそういうところを目指すキッカケになれば」という“狙い”もある。1軍経験のある先発の田上、ルーキーの生海外野手らが初めてPayPayドームの芝を踏んでプレーした。
この日の野手のベンチ入りは18人。従来よりも多い人数で「3週間くらい前にはコーチに指示をして。なるべくこっちに呼んでやってくれという話はしました」と小久保監督は明かす。3試合ある本拠地開催で「立ったことのない選手は全員出すつもり」と、具体的な起用まで明言する。たった3試合かもしれないが、選手の中で何かが変わるキッカケになってほしい思いがこもる。
「今日の活躍で1軍の首脳陣が目に止める選手が出てきてほしいと思います。ここだけの話ではないですけど、ここでやっていることは当然、1軍の首脳陣も知っているので。いつも見ている映像、雰囲気、景色の中で活躍ができれば、そういうふうに伝わるかもしれない。それは期待したいです」
可能性しかない若鷹たち。首脳陣の力強いサポートがあれど、最後は自分で羽ばたいていくしかない。今この経験を糧に高く飛んでみせる。