明石健志2軍打撃コーチは、昨季限りで現役を引退。指導者に転身して1年目を過ごしている。いわゆる“Z世代”と呼ばれる選手について「可愛いなと思いますよ。イライラすることとかないです」と言う。ベンチから戦況を見守り、時にはアドバイスしながら、選手とともに成長している。
2軍は1軍の戦力になる選手を準備させる場でもあり、育成する場でもある。今季から4軍が新設されただけに、2軍にはこれまでよりも多くの役割が期待される。「育成の選手ならある程度の練習もしないといけないし、知恵を入れていく作業もある。でも(増田)珠や(野村)大樹はある程度、できあがっている」と、選手に応じたアプローチが必要だ。指導者として少し経験を積んで、思うことがあるという。
現役時代は通算で648安打を放った明石コーチ。若い選手との人としての付き合い方には「イライラすることはない」というが、指導者として選手を評価するとなると、表情が変わった。「誰とは言わないですけど」とした上で、今の選手たちへの印象を語る。
「形を気にする選手がすごく多い。それはいいことなんですけど、練習だったらいいんです。でも試合になったら、いい形で打てるなんてそんなにないわけであって。要は、バッターって受け身なので、自分の形を気にしてやっていいのはピッチャーだけですよ」
「形、形って気にしているのに、打った時の試合後のコメントを見たら『いい感じに対応できました』ってコメントを残すわけじゃないですか。いや、対応しているんですよねって僕はいつも思っています。ヒットを打っても『形が…』っていう選手も多いです。結果的にその形で打ちにいって、あとは対応だと思います。あまりにもそこを気にしすぎるのも、っていう」
もちろん、打撃において基本は大切であり、基本の練度を高めていくことが必要ではある。だが、打者の最終的な目標は、投手の球を打つことだ。「ゴルフなら、自分のスイングでいいと思いますけど、野球は動いているボールを打たないといけない」と例えも用いて表現する。打者は“受け身”である以上、最終的な目標を忘れたままに練習していてもいけないと明石コーチは“警鐘”を鳴らす。
「やるのは僕らじゃなくて、選手ですから」。自分で責任を取らないといけない世界だが、選手へのアプローチはひと昔前とは違っていることは理解している。答えを全て提示するのではなくて、ヒントを与えて、選手自身に気付いてもらうのが目指す理想だ。大切にしてほしいことは、選手自らが考えてバットを振ることと明石コーチは言う。
「練習でも(選手を)引っ張らなあかんって思う時はありますけど。『おい、やるぞ』って引っ張るのは簡単なんです。引っ張って、それがあかんかった時に『俺やりたくなかったのに…』ってなれば絶対に悔いしか残らない。自分からどうやってやるように仕組んでいくか。やりたいって思ってやらない限りは、必要な時もあるかもしれないですけど、僕はあまり必要と思わないです」
「なぜかっていうと、愚痴が出る。『やりたくなかったのにやったから疲れて打てませんでした』って。そんなん、いらんからね」
自身も現役時代は腰痛に苦しんだ。「痛いとか言っていられないし、言いたくもなかった。痛いなら痛いなりに、痛くないところを見つけたし。それでダメならダメでリハビリ組に行くしかなかった」。1つの練習をするにしても、自分が“やる”と決めて、選んでいくことが重要だ。他の誰のためでもなく、自分のために戦わないといけない世界だから。