自己最速は145キロも昨季途中には130キロに満たない時期も…
成長著しい若鷹がいる。“化ける可能性”を大いに秘めているのは、育成2年目の田中怜利ハモンド投手だ。筑後のファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で行われている春季キャンプで、飛躍の予感を感じさせる日々を送っている。
2021年育成ドラフト5巡目で入団した右腕。東京生まれ愛媛育ちで、ナイジェリア人の父を持つ。愛媛・帝京五高に入学してから本格的に投手に挑戦し、公式戦デビューは3年生になってから。実績は乏しかったにも関わらず、育成ドラフトで指名された。未知数のポテンシャルがとにかく魅力だ。
ただ、ルーキーイヤーは、その片鱗をなかなか見せることが出来なかった。高卒1年目なので粗さはあって当然だが、それにしても、四死球の多さや球速面など、その潜在能力の高さを見出すのは難しかった。ところが一転して、今春は見違えるような成長を感じさせている。
ボールの威力、球速、練習姿勢、更には挨拶や取材対応など、とにかく野球人として全ての面で著しい成長を見せる。今年初めて打撃投手を務めた際、その変貌っぷりが分かり「去年より状態が良くて、球速がだいぶ上がっていて良かったです。去年の悪い時からだと10キロくらい上がってるかもしれないです」と笑みを浮かべていた。
自己最速は高校時代にマークした145キロ。ただ、プロ入り後は思うように歯車が噛み合わず、状態の悪い時は130キロに満たないこともあった。「ストライクが全然入らなくて苦しかった」と制球面でも悩んだ。高校時代には出来ていた“打者に向かっていく姿勢”も次第に失われていった。心が折れかけたこともあったという。
そんなハモンドを変えたのは、周囲からの励ましの声だった。「帰省して、いろんな人に頑張れと言われて、頑張らないといけないなと気持ちを入れ替えることが出来ました」。昨年から続けてきたトレーニング、身体作りの成果もあり、体力もついてきた。「多少疲れてても投げたくなるし、全体練習後の個別でもしっかり練習出来ています」と話す。
1年目にコツコツと積み上げてきた成果は、しっかりとパフォーマンスに表れ始めてきた。体幹トレーニングは苦手だと言うが、難度の高いメニューをスマートにこなすなど、周囲も驚きを隠せない。ポテンシャルを発揮するための土台作りが順調に来ている証だろう。また、魅力の1つは、関節の柔らかさ。千賀滉大投手のような肩関節、股関節の柔軟性が特徴だ。
「それを使いすぎて、無駄なエネルギーになってないかなと思って試行錯誤しています。更によく出来ないか、みたいな」。柔らかさゆえに、ボールを撫でるようにリリースしてしまいがちだった。身長191センチの高さも生かし「上から角度のあるボールを投げたい。撫でるではなく、上から叩くイメージで」と理想を掲げる。1年目に出来なかったことが出来るようになり、手応えを実感している。心も身体もたくましくなったハモンドが、今年は面白い存在になりそうだ。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)