「来年は勝ちゲームに」と小久保2軍監督も注目 苦悩の高橋純平を変えたコーチの言葉

ソフトバンク・高橋純平【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・高橋純平【写真:藤浦一都】

森山1軍投手コーチは「強い真っ直ぐを真ん中に投げれば、抑えられる」

 苦悩の日々にようやく光が差し始めた。期待されながらも、今季は1軍登板なしに終わった高橋純平投手が、復活の兆しを見せている。ストレートの強さが戻りつつあり、課題だったコントロール面でも成長を見せている。

 宮崎県内で開催されている秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」。高橋純はここまで中継ぎで3試合に登板し、ヒットを1本も打たれていない。毎試合2個ずつ三振を奪い、16日に行われた四国IL選抜戦では最速154キロをマーク。与四球も1つで、安定感が出てきている。

 2015年のドラフト1位右腕も、はや今季で7年目。1軍の戦力にならなければいけないところが、序盤から不振に喘いだ。春季キャンプ中から右内転筋に違和感を感じながらプレーを続け、精彩を欠いた。4月半ばにはこれを完治させるためにリハビリ組へ。約1か月半の離脱を経て、実戦に復帰したが、制球難に悩まされた。ボールを引っ掛けたり、抜けたり……。コントロールも結果も安定せず、苦しい投球が続いた。

「どうしてもポンポンとツーアウトをとっても、それから四球を出しちゃう。それをすごく自分自身で嫌がっていて、そこにフォーカスしすぎて、腕が振り切れなくなっていた」。コースに、コースにと、意識し過ぎるあまり腕が振れなくなり、よりコントロールが不安定になる――。そんな悪循環に陥っていた。

 光が差し始めたのは、8月の筑後だった。新型コロナウイルスの陽性判定から復帰した森山良二1軍投手コーチがファームの試合でベンチ入りした。その際に森山コーチから声をかけられた。「強い真っ直ぐをとにかく真ん中に投げ続ければ、抑えられるんだから」。コースを正確に突かなくても、球の力でねじ伏せればいい。この言葉が高橋純の意識を変えるキッカケになった。

「そこからは真っ直ぐを磨き続けることしか考えていないです」。R&D(リサーチアンドディベロップメント)担当のスタッフに協力してもらい、真っ直ぐの質を追い求めた。「1軍とか2軍とか関係なしに、コースに決めるんじゃなく、どのバッターに投げても真ん中でも『ちゃんとファウルを取れる真っすぐを作ろう』というところを目指して、ずっとやってきた」。ボールの回転効率なども分析。試行錯誤しながらも、状態は右肩上がりだった。

 1軍での登板がないまま、シーズンは終わった。ただ、クライマックスシリーズ前の1軍シート打撃で好投し、フェニックス・リーグでもチーム随一の安定感を見せている。真っ直ぐも安定し、150キロ台を叩き出し、連投になってもスピードが落ちることもなくなった。「全体的に腕のリリースだとかも安定してきたかなっていう感じ」と高橋純自身もようやく手応えを掴み始めている。

 この内容には小久保裕紀2軍監督も「この感じだったら『来年は十分に中継ぎで勝ちゲームに入っていける』というものは見せつつある」と注目している。1軍は全日程が終了してしまったため、ここからは冬、そして来春のキャンプと、この状態を維持、さらに向上させていくことが必要になる。

 16日の試合後に高橋純は「今日くらい投げ切れれば、来年にも繋がるかなと思うし、今の良い状態をいかに来年の春まで維持していくかと。春に藤本さんにアピールできるように頑張りたいと思います」と、8年目となる来季に視線を向ける。2023年を復活のシーズンにする。

(取材・米多祐樹 / Yuki Yoneda)