昨年の3月19日に支配下登録を勝ち取って以降、すべての試合を1軍で過ごした。86試合に出場してスタメン出場は9試合のみだったが、守備固めや代走などでチームになくてはならない存在として機能した。約1年半ぶりのタマスタ筑後での試合出場となったが、「久々でしたけど、自分はやりたいことがあったので」と緒方は静かに闘志を燃やす。そうさせたことには指揮官からの言葉と配慮があったからだった――。
「小久保監督から『試合に出てきてくれ』と言われたんです。ここではたくさんの打席に立てるので、プラスに捉えています。その中で自分のしたいことも今できているので。すごくいい時間を過ごせていると思っています」
実力不足が理由で2軍にいるわけではない。1軍に必要な戦力として、緒方の出場数を確保するためにファームでの調整が命じられた。その思いに応えるかのように緒方は打撃でもアピールを続けた。1つ1つの打席を大切に、自身の課題克服に励んでいる。目的と意図がある2軍戦の出場だからこそ、落ち込むことはない。課題としっかり向き合い、必要とされる戦力であり続けるための準備を怠ることはない。
「僕は後(試合途中)から出場する選手なので『まずは見たい選手がいる。試合に出て打席に立つことを考えたら、ファームの方が機会が多い』と小久保監督が考えて、伝えてくれることはすごくありがたいです」
開幕1軍をかけた外野手の争いは激しさを増しているが、その戦況を緒方は冷静に捉える。「戦うとかはあんまり気にしていません。自分がやらないといけないことをやるだけで、他の人がどうとかは思っていないです」。他人との比較するわけではなく、自身が生き残るために何をするべきかを考えているからこそ、自身の成長だけに目を向けることができる。その集中力は打席の中でも伝わってくる。
「PayPayドームの方がいいなとはやっぱり思うので。そこを目指してやります」
育成時代に汗を流してきたタマスタ筑後は悔しい思いを何度もしてきた場所だ。その時間をともにしてきたのが、当時2軍監督だった小久保監督だ。「試合に出てきてくれ」という期待と配慮。小久保監督の言葉の意味は誰よりも理解できる。開幕1軍を掴み取るため、今日もひたむきに汗を流す。