なぜ渡邉陸、笹川吉康らが2軍降格? 「トータルで考えたら…」首脳陣が明かす意図

2軍行きが通告された渡邉陸(左)、笹川吉康【写真:冨田成美】
2軍行きが通告された渡邉陸(左)、笹川吉康【写真:冨田成美】

小久保監督が明言…笹川、渡邉、庄子、浜口、田浦に通告

 明確な課題と意図を持って、5選手の2軍行きが決断された。12日に行われた巨人とのオープン戦(みずほPayPayドーム)でスタメン起用された渡邉陸捕手と庄子雄大内野手、代走で途中出場した笹川吉康外野手に、13日からの2軍合流が告げられた。さらに、田浦文丸投手と、浜口遥大投手にも同様の通告がなされた。

 その背景には、首脳陣による選手の未来を見据えた判断と、育成への強い意図がある。奈良原浩ヘッドコーチと高谷裕亮バッテリーコーチが、今回の野手陣の決定について詳細を明かした。

 甲斐拓也捕手が巨人に移籍して以降、“正捕手争い”に注目が集まる中で渡邉は必死のアピールを続けてきた。笹川も、柳田悠岐外野手を主に指名打者で起用する方針のもと、限られた外野手の枠を目指してきた。小久保裕紀監督は14日のウエスタン・リーグ開幕までに選手を絞っていくことを明言していた中で、渡邉や笹川が2軍合流となった意図に迫る。

「守備機会、打席数、出場試合をトータルで考えた場合、こっちで出られないんだったら2軍の試合に出て打席に立つ、1球でも多く守備を捌く。試合感を養うっていう部分を考えれば、2軍の試合に出る方がいいっていう判断ですね。3選手とも」

 こう語るのは奈良原ヘッドコーチだ。16人という限られた枠の中で、あくまでも現時点でのチームバランスを考慮した結果だという。「例えばだけど、笹川とかでも最後の代走の出番しかない状況であれば、2軍で打席に立って調子を上げてほしい。去年もそうだったけど、誰かに何かがあった時にすぐ1軍のゲームに入れるように」。大事な戦力だからこそ、経験を積み重ね、自信を持って1軍のグラウンドに立てる状態を作っていてほしいと願う。

 もちろんキャンプからオープン戦の期間で課題も見つかった。笹川に関しては「数字を見てもわかるけど、そこまで打てていない。キャンプ中はヒットを打っていましたし、徐々にヘッドが出なくなってきたりするのであれば、もう一度向こうで調整して、いつ呼ばれてもいいような準備をしてもらいたい」と話す。現状の打撃成績と状態を踏まえ、課題克服を促した。キャンプ中は打撃でアピールできていたからこそ、万全の状態で1軍に呼ぶための準備期間とする狙いだ。

 渡邉について、高谷コーチは「全体的なことに関しては、よくはなってきていて、本人もちょっとずつ変えていると思うんですけど。精度であったり、細かい所。プレーに見えない部分というか。細かい所の話はしています。準備もしっかりしていますし、取り組みもすごくよくなってきている」と確かな成長を認めつつ、更なるレベルアップの必要性を説く。

「まだまだ課題はありますけど、パスボールしないで終わったっていう試合も増えてきているじゃないですか。結果として見え始めてきているものもあるので。そういう自分になろうとしてるってことが大事。アーリーの練習もそうですけど。知らないバッターを見るのに、(相手チームの)バッティング回りをベンチの端で見たりしている姿も見ていますから」

 選手の小さな努力や姿勢を見逃していないからこそ、その先の成長に期待ができる。1軍に帯同し続けることの意味も大いにあるだろうが、積み重ねてきたものを実らせるためには、試合に出続けることができる環境の方がプラスに働く。事実、昨年も1軍に昇格した選手をすぐに結果を出したシーンは何度も見られた。通達を受けた選手は現状を受け入れがたい気持ちもあるだろう。それでも彼らが再び1軍の舞台で輝きを放つ日は必ず来る。今はただその瞬間を楽しみに待ちたい。

(飯田航平 / Kohei Iida)