キャンプ地が騒然…若手投手がファンに“神対応” 見本とした上沢直之の存在

クレープの代金を自ら支払った上沢直之【写真:冨田成美】
クレープの代金を自ら支払った上沢直之【写真:冨田成美】

自然体の新戦力は「ずっとチームにいたんじゃないかって」

 ホークスの宮崎キャンプに1万人を超えるファンが詰めかけた8日、地元の名店が軒を連ねるホークスビレッジが騒然となった。昼食時にも関わらず岩井俊介投手、大山凌投手、木村光投手が突如、「買い物客」として現れたのだ。

 岩井が「14人分です」と注文したクレープが出来上がるまで、時間を要するのは当然のこと。その待ち時間は、たちまち即席のサイン会となった。ファンにとっては最高のサプライズ。時間が経つにつれ、その一団は膨れ上がり、球団関係者が駆け付けるまでになった。

 ただこのときも岩井らは1人1人、丁寧に対応していた。“見本”としている先輩の姿を見ている影響もあるだろう。その存在は、今年新たに加わった上沢直之投手だ。

 3人が「お買いもの」に行く前、はんぴドームは熱を帯びていた。ピッチャーはフィールドにいるどの野手よりも打者に近く、ときに痛烈な打球が飛んでくるポジションでもある。その打球反応を向上させるため、投手陣は硬式球よりも柔らかく、弾力があるボールで鋭い打球のノックを受けていた。

 正面で7本、逆サイドで5本、そして最後は回転して2本を捕球すれば終わるメニューだった。その中で、最後まで残った人が“ご馳走”するルール。一騎打ちとなったのが、上沢と木村光だった。

 ひりつく戦いにボルテージも上がる。ラスト1本となったところで、上沢にスーパープレーが飛び出した。この盛り上がりに乗じて「もう1本!」と“特例”が適用された木村光が最下位になった。ただ、負けを免れた上沢にとっては、投手陣に一体感が生まれただけで十分だった。

「ほぼ僕の負けみたいなものですから。それをキム(木村光)に背負ってもらうのもいけないなって」

 クレープの代金を自ら支払った上沢。一肌脱ぐ形となったが、年長者として、プロの世界で実績を積み上げてきた者として、特別な対応ではなかったかもしれない。ただ、常に注目を浴びながらも自然体で振る舞い続ける右腕に、木村光は目を輝かせた。

「自分にもめちゃくちゃ優しい。本当に、もともといたんじゃないかっていうぐらい馴染んでいる。来る前は、自分もこんな人やと思っていなかったので」

 上沢の飾らない姿勢は一貫している。サインを始めれば、1時間以上書き続けることもある。その時も相手と目を合わせ、一言添えることも珍しくない。「ファイターズの時も、当たり前だったので」。その「当たり前」が、環境が変わっても変わらぬままだ。

「ファンサービスでも世界一」。奇しくも、城島健司CBOがキャンプ前日の1月31日のミーティングで伝えたメッセージをすでに新戦力は実践している。その姿勢が、早くも次世代の選手たちに浸透していた一幕だった。

(鷹フル編集部)