牧原大成の「優しさ」…なぜ育成たちの面倒を見る? 自分の練習時間さえ“削る”真意

自主トレを公開した牧原大成【写真:竹村岳】
自主トレを公開した牧原大成【写真:竹村岳】

山川&周東も感嘆…「目標とする選手が目の前にいるのか、いないのか」

「甘い」とは言い切ったが、それは優しさの証でもあった。自分の練習時間を“削って”でも、なぜこんなにも手厚く、後輩の面倒を見るのか。熱い理由に迫った。

 牧原大成内野手が16日、福岡県内の小郡市野球場で自主トレを公開した。3年連続の参加となった緒方理貢外野手に加えて、今回は育成の中澤恒貴内野手、藤野恵音内野手、西尾歩真内野手、山下恭吾内野手がともに汗を流している。後輩たちの姿に、牧原大は「甘いですね」とキッパリ。自分自身が育成だった時と比較しても「甘いと思います。だから自分が引っ張っていかないといけないと、より強く思っています」と言い聞かせる。

 自主トレについて考えた時、同学年である中谷将大リハビリ担当コーチ(野手)に意見を求めた。「『育成で練習に来たい子がいるなら』と連絡をしました。そこから『行きたいです』と言った子たちがここに集まりました」と明かす。牧原大から手を差し伸べ、立候補した4人の育成選手が集結した。かつては「このままでは終わってしまう」と苦言を呈してきた3桁の若鷹に、なぜ今回は自ら歩み寄ることになったのか。

「目標とする選手が目の前にいるのか、いないのか。それで練習の取り組み方も変わってくると思います。僕らは当時、川崎宗則さんや本多(雄一)コーチが現役だった。『こういう選手になりたい』と僕も思っていたので、そう思ってもらいながら練習に取り組んでもらえたら」

 隣にいるチームメートは、自分とポジションを争う競争相手でもあり、アドバイス1つですら惜しむ選手も中にはいる。「だって(後輩が)練習しなければ僕が絶対に勝ちますもん」。山川穂高内野手と周東佑京内野手は、苦言を呈する牧原大の姿勢すら「優しいです」と感嘆していた。先輩としての“優しさ”を、本人はどう捉えているのか。強い口調にも思いやりが滲む。

「一緒にやっているだけであって、面倒なんか見ていないですよ。聞かれたら教えますけど。あとは見て、感じることで『これじゃダメだ』と思って、自分でもっと練習をするとか。そういうところにこの自主トレ期間中に気がついてほしいです」

 4人の育成選手に対して「甘いです」と言い切っていた。具体的に問われると、足りないと感じる部分について即答した。

「だって、年齢も10個以上離れている子もいる。僕とランニングのスピードが同じでは全然ダメだと思いますし。遠慮なんかいらないので、僕なんか置いていくくらいの気持ちで練習1つにしてもやってほしいんです。彼らもしっかりやっているつもりだとは思うんですけど、もうちょっと貪欲に取り組んでほしい。僕らが止めるくらい、やってほしい思いはあります。そういったところは足りていないのかなと思います」

ノックを後ろから見つめる牧原大成(左)【写真:竹村岳】
ノックを後ろから見つめる牧原大成(左)【写真:竹村岳】

 この日の自主トレ公開、印象的なシーンがあった。内野で西尾や山下らがノックを受けている姿を、牧原大は後ろから眺めていた。アドバイスを送るわけではなく、見つめるだけ。オフシーズンとは、自分のための練習量を確保する期間。山川も「4人で練習すると、バッティング練習でも順番が回ってこない。3人がちょうどいいんです」と話していた。育成選手が受ける1球すら、本来なら惜しいはずだ。

「僕は同じ境遇から始まった人間を応援したくなる」。育成という“ルーツ”を、誰よりも大切にしているから、自分の時間を“削って”でも、若鷹のプレーに目を光らせる。「『こうした方がいいんじゃないのかな』っていうのを、僕自身も見ながら考えていました」。フリー打撃でも牧原大は先に切り上げて取材に対応し、緒方も含めた5人が最後まで快音を響かせていた。実力の世界であることはわかっているが、這い上がってきた人間にレギュラーを掴んでほしいというのも、牧原大の本音だった。

「本当は自分1人でもよかったんですけど、僕ももう若くない。そういう思いを残していかないといけないし、来年は誰も引き連れずに1人でやるかもしれないですね」

 照れ笑いで締めくくった。後輩の未来を思う牧原大成はきっと、誰よりも優しい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)