勝ち星が消えても津森宥紀を鼓舞し続けた大関友久…同期だからこそ伝えた“本音”

ソフトバンク・大関友久(左)、津森宥紀【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・大関友久(左)、津森宥紀【写真:荒川祐史】

目の前にあった勝ち星が一転、黒星に…「信頼や実力を積み重ねていかないと」

 自らの勝ち星が消えても、仲間を応援する気持ちはみじんも変わらなかった。8月28日のオリックス戦(長崎)。3者連続の押し出し四死球を与えた津森宥紀投手に対し、ベンチで手をたたいて鼓舞し続けたのは、この日先発した大関友久投手だった。

 1-0の7回2死満塁で降板した大関の後を受けたのが津森だった。先頭の福田に四球を与えてあっさりと追いつかれると、続く太田にも四球。さらに森への2球目は腰付近への死球となり、1死も取ることができずに右腕はマウンドを降りた。この回の3失点は大関に付き、目の前にあった勝ち星は一転、黒星へと変わった。

 大関にとっては自己最多の8勝目がかかった試合だった。同期で入団した津森の乱調ぶりを目の当たりにしても、左腕は顔色一つ変えずに投球を見守った。その姿勢には大関なりのぶれない“哲学”があった。

「もちろん試合に勝ちたいので。僕がマウンドを降りた後、自分の勝ち星がどうのこうのじゃなくなった後でも結局、選手がチームの勝利にこだわれないというのはもちろんないですし。チームが勝つために(降板した後でも)ベストを尽くそうという気持ちはもちろん持っています」

 自身の勝ち星がどうでもいいというわけではない。「勝利数にこだわりはあります。自分に勝ちが付いているってことは、チームも勝っているってことなので。そこは負けを付けず、勝ちを付けたいという気持ちもあります。今年は2桁勝ちたいという気持ちでやっているので」。自らの思いを包み隠さずに明かした。

ソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・大関友久【写真:荒川祐史】

 悔しさの矛先は自らに向いた。「自分では続投したかったし、いけると思ってマウンドに立っていました。でも、そこは首脳陣の評価なので。もっと信頼や実力を積み重ねていくことが大事だと思います」。7回2死まで111球を投げ、無失点のまま降板しても自己評価は厳しかった。

 試合後、傷心の右腕にこう言葉をかけたという。「(みずほPayPay)ドームでまた頑張ろうという話はしました。やっぱり仲間ですし、またこれからも助けてもらうことがきっとあるでしょうし」。大関は仙台大で、津森は東北福祉大でともに腕を磨いた。試合で投げあったこともある盟友だからこそ、特別な感情を持っている。

 一方で、今は互いに厳しいプロの世界に身を置いている。「同期だからと言って、ただの慰め合いみたいな関係にはなりたくないので。そこは同じチームメートとして一緒に頑張っていきたいなと思います」。津森の力を信じているからこそ、言葉を飾る必要はなかった。

 今季は大関、津森のほか柳町達外野手や海野隆司捕手の「2019年ドラフト組」がチームを支えている。7月の試合では大関が「97年(生まれの)世代で頑張ろうか」と同期に声をかけたこともある。近未来のチームを担う世代の一員として、津森が本来の姿で戻ってくるのを待っている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)