いい状態は「キープできない」 繊細なスラッガーの感覚…山川穂高から見た柳町達とは?

4号2ランを放ったソフトバンク・柳町達(右)と山川穂高【写真:栗木一考】
4号2ランを放ったソフトバンク・柳町達(右)と山川穂高【写真:栗木一考】

栗原陵矢に代わって3番に入った柳町達…2試合連発と長打が増えてきた要因は?

 スラッガーがいうから説得力がある。いい状態は「キープできない」ものだ。ソフトバンクは16日、ロッテ戦(みずほPayPayドーム)に4-0で勝利した。3番に入った柳町達外野手が2試合連発となる4号2ランを放つと、直後に山川穂高内野手も27号ソロを放ち、2試合連続のアベックアーチとなった。昨季まで通算1本塁打だった柳町が今後、長打を継続させるために、山川が語った“重要”なこととは――。

 15日の西武戦(ベルーナドーム)から栗原陵矢内野手に代わって3番を務める柳町は、初回1死二塁で2ボールからのツーシームを右中間テラスに運んだ。関東からの移動ゲームだったが、第1打席から最高の結果を残してみせた。

 続く山川も左中間に27号ソロを放った。2試合連続で3番、4番によるアベックアーチ。柳町は昨シーズンまで通算1本塁打だったのだから、確かな成長がこの試合に表れている。幾多のバッターを見てきた山川にとって、柳町の特徴はどんなところにあるのか。

「やっぱり“当て感”っていうんですかね。ボールに対してバットのラインが人よりも長く入るバッターだと思います。どのコース、どの球種にも対応できるタイプですよね。コンちゃん(近藤健介)とかに近いと思いますね」

 8月に入って、山川は9本目のアーチ。本塁打に対する感覚は、すぐに消えていくものだと語る。7月下旬には「いつもはもっと(感覚は)残ったりするんですけど。これがまた、残ったり、消えたりするかもしれない。消えながらになると本数は減りますよね」と自らの状態を分析していた。

「相手(投手が)がいることですから。キープしようとすることができないんです。何回も、何年やっても、できません。ずっといい打ち方なんてできたら、100本くらい打てます。できないからこういう数字になっていく。悪い時は悪い、良い時は良いっていうこと(状態)が起こってしまうので。明日4三振するかもしれないですし、そんなものです」

 感覚が日々リセットされるわけではないが、打者にとって投手との対決は常に受け身。だからこそ「同じことを繰り返します。でも悪い時に同じことを繰り返していたら悪いだけになってしまうので、良いものを見つけに行く。いい当たりが出ているうちに(感覚を掴むための取り組みを)継続していないといけないです」。山川でさえ、“感覚”という抽象的なものが体から離れていかないように、毎日必死なのだ。

ソフトバンク・柳町達【写真:栗木一考】
ソフトバンク・柳町達【写真:栗木一考】

 柳町は今季50試合に出場。その中で、この日のスタメン起用は38試合目だった。山川が言った「感覚を継続させる」ということについても「僕も日によって変わるので、難しいと思います。ですけど、毎日練習とかで確認しながらいい状態に持っていけたらと思っています。本当に1日1日という形でやっています」と、同じく必死だった。昨秋から課題としてきた長打の増加。少しずつだが確実に、自分のものになってきた。

「(要因は)いろんなものがあるんですけど、バットの使い方、ヘッドのスピードが出る打ち方ができてきたと思います。色々と参考にしていることはあるんですけど。去年の秋にドライブラインで測定したことをやってみたり、近藤さんや他の選手に聞いてみたり、コーチにも聞いたり。それを試してみてという形で今に行き着いたので、全部ですね」

 今後の本数について問われても「いっぱい打ちたいです」と具体的な数字は挙げず、足元を見つめた。5年目というシーズンで、柳町が持つ才能が花開こうとしている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)