“先の先”見据えた廣瀨隆太の一塁起用 主砲の休養だけではない首脳陣の狙いとは

ソフトバンク・廣瀨隆太【写真:中戸川知世】
ソフトバンク・廣瀨隆太【写真:中戸川知世】

廣瀨にかかる未来の主砲への期待…6月は打率3割に迫る成績をマーク

 首脳陣が「先の先」を見据えた采配の1つが、ドラフト3位ルーキー・廣瀨隆太内野手の一塁起用だ。今季ここまで23試合(先発は21試合)に出場し、フル出場が12試合。そのうち半数以上の7試合でポジションが二塁手から一塁手に変わっている(6月27日現在)。

 いわゆる「守備固め」としての起用。1つの理由は今シーズン出ずっぱりの山川穂高内野手を休養させる目的だ。近藤健介外野手が6月12日のヤクルト戦の守備中に右手を痛めたことにより、翌13日から指名打者としての出場を余儀なくされている。

 その影響で山川は同日以降、一塁での先発が続いていることもあり、疲労を考慮した首脳陣による「一塁・廣瀨」ということだ。ただし、奈良原浩ヘッドコーチは別の理由も明かしてくれた。「小久保(裕紀)監督は考えてますよ。先の先まで」。指揮官のルーキーに対する期待だ。

「途中交代するのと、試合の最後まで出続けるのでは経験値という意味で大きな違いがある。監督もその点では経験を積ませたいと思って、そういう配置を考えていることは間違いないですね」

 慶大では東京六大学で歴代4位タイとなる通算20本塁打を記録した廣瀨。初安打を記録するまでに17打席を要したが、6月27日現在で打率.243、2本塁打をマーク。6月に限定すると打率.283まで上昇。プロのレベルに慣れてきた証といえる。

「現時点ではセカンドのレギュラーというわけじゃないから。1つのポジションというよりは、(ファーストも含めて)両方できたほうが当然いいので」と奈良原ヘッドは明かす。首脳陣は冷静に実力を把握しつつ、将来の主砲候補への大きな期待をかけていることが分かる。

ソフトバンク・廣瀨隆太【写真:小林靖】
ソフトバンク・廣瀨隆太【写真:小林靖】

 廣瀨自身もフル出場には大きな意味を見出している。「9回の守備はやっぱり(雰囲気が)緊迫することが多いので。そういう経験もすごく大事なことだと思います」。一塁守備についても「大学でも(二塁を守るのと)半々くらいだったので。苦手意識や違和感はないです」と自信を見せる。

 首脳陣からの期待を感じるのかとの問いには「そんなことないんじゃないですかね」と笑って頭をかいたが「僕はルーキーなので。いろんな経験をさせてもらえるのはありがたいと思っています」と感謝の思いを口にした。

 初のフル出場となった6月9日のDeNA戦は出場11試合目だった。そこから出場13試合のうち、実に12試合で最後までグラウンドに立っていることになり、信頼の高まりが見て取れる。勝利と育成を両立させている小久保監督の手腕といってもいいだろう。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)