野球解説者の井口資仁氏が「5番・近藤」のメリットを解説
1997年から8年間、ダイエー(現ソフトバンク)でプレーし、走攻守の3拍子が揃った内野手として3度のリーグ優勝、2度の日本一に貢献。メジャーでも2度の世界一を経験した井口資仁氏が「鷹フル」に登場です。ロッテで監督も務めた鋭い目線でソフトバンクを分析する新たなコンテンツがスタート(不定期掲載)。初回は小久保裕紀監督が近藤健介外野手を5番で起用し続ける理由を考察します。(今季の成績は6月9日時点)
今季は開幕前から12球団屈指の打撃力を誇る近藤、柳田悠岐外野手、山川穂高内野手の主軸3選手が、ホークス打線のなかでどのように並び立つのか注目されていた。昨季リーグトップの出塁率.431を残した近藤を2番に置いて得点力アップを図ると予想する声もあったが、小久保監督は柳田が怪我をした5月31日までの全48試合で3番から柳田、山川、近藤の並びを変えることはなかった。
「山川の後ろ、というだけだと思います」
井口氏の考える「5番・近藤」の理由は単純明快だった。山川は12本塁打46打点でリーグ2冠を独走中。「4番山川を軸に考えたとき、近藤、山川、柳田の並びでも破壊力はありますけど、山川が歩かされてランナーがいることを考えると、打率は近藤の方がいいし、得点圏打率も十分に高い。それらを加味して5番になったんだと思います」。
近藤の評価については「バットに当ててくるので、“コト”が起きるんですよ。何かしらね。出塁率がいいし、三振もしない、長打はある、粘って球数を放らせる……。全てを兼ね備えているバッター。ランナーが三塁にいるときは絶対に回したくない打者ですよ」。かつての“敵将目線”から昨季の2冠王の脅威を分析した。
だからこその「5番・近藤」なのだ。「山川の後ろが近藤でなければ、間違いなくココという場面では山川は敬遠されてしまうので。小久保監督は、その辺りを考えてだと思いますよ」。5番に近藤がいることで、山川も勝負を避けられる場面が減り、必然的に現在の打撃成績に繋がっているという。
小久保監督の構想にあった“幻のクリーンアップ”
「3番に走れる柳田がいたのも大きかった」と井口氏。出塁率は4割を超え、出塁後には山川、近藤の一打で三塁到達や一気に本塁生還を狙える走力があることも、“小久保流クリーンアップ”のストロングポイントだった。
最後に井口氏からは興味深い話も飛び出した。5月31日、6月1日に解説でみずほPayPayドームを訪れた際に、クリーンアップの並びについて小久保監督から「いじろうかな」と打ち明けられていたという。5月24日から同30日までの6試合は1勝5敗と苦戦。開幕から驚異的な得点力を見せていた打線に陰りが見え始めていた時期だった。
「少し打線が湿っていたときだったので、活発化させる狙いだったんでしょう。結局、柳田が怪我して栗原が3番に入るようになりましたけど。栗原も調子が上がってきたので楽しみですよ」。“幻”となったクリーンアップの組み替え。柳田が健在だった場合、小久保監督の頭の中では、果たしてどんな構想が描かれていたのだろうか――。
(湯浅大 / Dai Yuasa)